コラボ・コープOB

生協のOB同士で、交流と意見交換を進める場とします。  自分のこと、お互いのこと、生協のこと、世の中のこと、―-協同・平和をめざして。

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『生協の持続的発展を願って』について 現在の社会的状況と協同組合の改革事例で考えてみる

「寄稿」

[岡本好廣]

『生協の持続的発展を願って』について
    現在の社会的状況と協同組合の改革事例で考えてみる
   

  大友弘巳著『生協の持続的発展を願って』を読んで、現在の社会や経済の状況をどう理解すべきか、それとの関係で協同組合、特に生協の在るべき姿を考えてみることにした。一読したところ著者の主張と私の考えは共鳴し合うところが多い。少し回りくどくなるが、私流の書評として呈したい。

「事実」と「真実」の違い
日本は1992年以降昨年末で892兆円もの国と地方財政の投入と世界に類を見ないウルトラ金融緩和を続けながら、デフレは一向に改善しないだけでなく、ますます深刻の度を加えている。これは何故なのか、今後どうなっていくのか?この疑問に正面から答えた説得性ある本がある。水野和夫著『終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか』(日本経済出版社刊)である。著者は5つの証券会社で長年エコノミストを務め、三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを最後に退職し、現在は埼玉大学大学院経済学研究科客員教授の職にある。テレビの経済解説でも知られているが、証券エコノミスト出身とは思えない深い思想をもった経済学者である。

 先に出された『100年デフレ』『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』を読んで注目していたが、昨年集大成とも云うべきこの本を出して話題になった。530ページを超える大著で、内160ページが引用文献の解説に当てられており、それを読むと更に理解が進むという重厚な本である。ここでは長い引用は出来ないが、資本主義の歴史的構造分析からアメリカの新自由主義とは15~16世紀の「重金主義」であり、オバマの国家輸出戦略は「ネオ重商主義」であるとする。このように考えるとアメリカがTTPへ執着する理由が判る。同時にそれに追従するのは日本の利益になるのかという疑問が出てくる。現在は新興国のインフレと先進国のデフレが交叉する時代で、経済の安定化がますます困難になると指摘する。水野氏は「事実は真実の敵だ」という言葉を引用して、次のように解説している。即ちグローバリゼーションの「事実」とは、「ヒト、モノ、カネの国境を越える自由な移動」であり、グローバリゼーションの「真実」とは、帝国システムをなす中心と周辺を結びつけるイデオロギーであると定義する。「事実」しかみていないと、後でグローバリゼーションの帰結は「想定外」だったといっても、すでに遅しであるとする「事実」と「真実」を見分けることの重要性を学んだ次第である。元大蔵省財務官でミスター円と呼ばれた経済評論家榊原英輔著『世界恐慌の足音が聞こえる』(中央公論社刊)は、<アメリカの金融大崩壊>の章を殆ど水野和夫氏のこの本からの引用で説明している。即ち世界経済の長期停滞と格差拡大、福島原発事故と新たなエネルギー問題、食糧価格の高騰と、ある種の経済危機が近寄っていると訴えている。対GDP比200%を超える公的債務を抱える日本は最も憂慮される状態にある。明日突然どういうことが起きても不思議でないというのが日本経済の実態である。危機に遭遇したときに最も頼りにされるのが生協であることは、東日本大震災で経験済みである。普段の暮らしに貢献するのが生協の役割だとすれば、人々が普段の生活を破壊された時にいち早く元に戻してあげるのが生協の任務であろう。

「想定外の事態」であっても…
昨年は「想定外」という言葉が頻繁に使われた。しかし本当に「想定外」のことは少なくて、実際には十分に想定して置かなければならないことが多かった。今後「想定外」という事態を少なくし、「想定外」を「想定内」に納めていくにはどうすればいいであろうか?生協の場合にはもう1度地域に於ける役割を見つめ直して、組織が、事業がそれに十分対応できているかどうかを検討する必要があろう。「想定外の事態」にこそ「原則に基づく運営」が求められる。これこそが危機を乗り越える方法だからである。
協同組合には「歴史に学び、哲学を忘れない」という教えがある。難しい時代に道を誤らないために先人が取った方法を歴史から学び、協同組合の哲学を忘れず、困難なとき、選択に迷ったときには原則へ立ち戻るということである。東日本大震災後にいわて生協やみやぎ生協で組合員の結束が強まり、供給が伸びたというのは危機の中で組合員の生協に対する信頼が強まったからであろう。協同組合特に生協には組合員から学び、他の生協から学ぶという強みがある。他の生協から学ぶのは国内の生協だけに限ったものではない。70年代にイタリアの生協は日本に学んで、組合員の細分化組織を取り入れて信頼関係を強めた。改革のやり直しを行って組合員の信頼を取り戻したところもある。イギリスの生協がそれである。逆にスウェーデンは店舗の全国統合と国境を越えた組織の設立に失敗し、元に戻さざるを得なくなった。反面教師もまた貴重な教訓である。それらの内容は『生協の持続的な発展を願って』で紹介されている。イギリスでは生協より以前に協同組合銀行が倫理的な業務の遂行によって、組合員の高い支持を得ている。これはイギリスに限ったものではなく、ドイツ、フランス、オランダ、イタリア、オーストリア、フインランドでも組合員の支持は高いものがある。協同組合銀行での組合員の支持はコンプライアンスに基づく経営と、結果としての健全運営によって一層強固なものになっている。2008年のリーマンショックによってヨーロッパの金融機関が軒並み危機に瀕した時に、協同組合銀行は健全経営を続け、国連が国際協同組合年を制定するときにこのことを高く評価している。
高度な技術を基にした工業協同組合を中心に、金融、流通、福祉、ソーシアルサービス、大学等を運営するスペインのモンドラゴン協同組合グループは、労働者組合員というユニークな組織をもとにして、着実な成果を上げている。昨年JA全中教育部がモンドラゴングループの詳細な現地研究を行い、その結果を小冊子にして発行した。「モンドラゴンの躍進から学ぶもの」という報告の中で、参加者は次のような感想を述べている。「組合員に若い世代が目立ち、全員経営者という発想で運営し、経営幹部ほど協同組合理念にモチベートされている。人的資源の開発・蓄積、強固な組織文化の形成がみられる。そして躍進の本質にあるのは地域に雇用を創出し、グローバル展開と同時に地域に根ざした多様な協同活動を展開しているのが特徴であり、本質である」

自立と協同、それを補完する連帯
イギリスの生協の復調は協同組合の母国で組合員の信頼を取り戻し、それが立ち直りの力になったことを示している。ヨーロッパの協同組合銀行は1部ギリシャのソブリンリスクの影響を受けたものの経営は健全で、組合員を中心とする庶民金融の領域で大きな貢献をしている。モンドラゴン協同組合グループは創始者アリスメンディアリエタ神父の協同組合哲学に基づいて、バスク地方にしっかりと根を下ろしている。日本でも「生協の持続的発展を願う」立場から幾つか考えることがある。生協総研の専務の最後の時期の1997年3月に『時代の転換と生協改革』-「21世紀に生きる生協」を目指してという70ページ程の提言を執筆して<生協総研レポート>に掲載した。それを今手にしてみると、想定されている現在の状況は経済成長ゼロ、またはマイナス、環境破壊の激化、政治の不安定、失業者の増大、社会の不安定等、かなり厳しい予測をしている。この時期は生協の成長が鈍化し、経営が悪化する生協が増え、不祥事が続いていた。従って提言もマネジメントを中心に厳しい内容のものであった。しかしそれを乗り越えて発展を続けようとする展望も示した。成長志向から抜け出せないで、総花式のところがあったが…。生協がそれぞれ<こういう生協を目指したい>という姿を提示することを呼びかけた。「どのように世の中が変わっても生協が人と人との結びつきで成り立っていることは変わらない。人と人との有機的関係が“協同”である。こういう生協を目指したいと考えるとき基本に“人”と“協同”を考えたい。同時に地域を主語にして生協を考えていきたい。同じように組合員へのお役立ちという立場で生協を考えていきたい。組合員へのお役立ちを作り出すのは役職員である。」この頃組合員活動が低調になっており、それへの警鐘も鳴らしている。事業連合が漸く軌道に乗り始めた時期でなかったかと思う。自主と自立を前提に連帯活動を通じて生協の未来を切り開いていく。そこには生協運動の新しい展望があった。それから15年経った今、事態は大きく変わろうとしている。単協と事業連合と日生協がそれぞれの役割に基づいて、自主と自立と協同を通じて組合員のために生協の役割を果たしていくという方針はどうなったのか?また全ての機能を1つに集約した巨大生協を出現させるのが本当に組合員の利益になるのか、冷静に考えると疑問が尽きないところである。冒頭に紹介したように現在及びこれからの経済状況は予断を許さないものがある。組合員の生活にとって本当に役立つ生協とはどういうものなのか、それはピラミットのような巨大で遠い組織ではなく、身近にあって組合員同士の息遣いが伝わってくるようなものなのではないのか。そういう点では大友さんが指摘し、憂慮していることに同感である。

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