コラボ・コープOB

生協のOB同士で、交流と意見交換を進める場とします。  自分のこと、お互いのこと、生協のこと、世の中のこと、―-協同・平和をめざして。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

「2012年・国連国際協同組合年について」 -改めて協同組合の役割を考える-

「寄稿」
 以下の講演録は、「三水会」主催の交流会「花の雑学」の例会において、岡本好廣さんが講演されたときのもので、同会のご好意によって転載させていただいたものです。
長文ではございますが、国際協同組合年に当り、「改めて協同組合の役割を考える」スタートとして、掲載させていただくようお願いしました。
 「三水会」は1987年に発足したIT関連の異業種交流会で、以来35年近く、毎月欠かさず例会を開催しておられます。
 そのホームページ「花の雑学 三水会便り」のURLは次の通りです。貴重な講演録が多数ご覧になれます。
  http://www.hone-kenko.org/sansuikai/sansui_new.html 
                                   管理人「少老朋友」より

[岡本好廣]

1.国連国際協同組合年の目的と意義
(1)国際協同組合年制定の経過   

 国連事務総長は2年に1度協同組合に関する報告書を発表し、協同組合の経済及び社会開発への貢献について報告している。2007年の「協同組合と社会開 発」に関する事務総長報告についての論議の後に採択された決議で、「国連事務総長は各国政府並びに関連国際機関と協議し、国際協同組合に関する国際年を宣言する」ことが望ましいとされた。
  これを受けて2009年の事務総長報告(「協同組合と社会開発」A/64//132、2009年7月19日)は、社会経済開発と世界の食糧・金融危機の観 点で協同組合が如何に長期的に貢献しているかを強調し、「協同組合に関する国際年」を制定して協同組合の振興を図ることは時宜を得たものであることを表明 した。
  こうした経過を踏まえて2011年10月31日の国連総会は、2912年を「国際協同組合年(International Year of Co-operatives=IYC)」とすることを満場一致で決定した。国連は各国政府にIYCに向けた委員会を設置するよう呼びかけた。日本では外務省人権人道課が国連との窓口になって進めることになった。

  こうした決定の背景にはリーマンショックによる世界的金融危機に国連はどう対応していくのか、幾つかの重要な選択肢のなかで金融危機の最中でも協同組合経 営は安定していて、各国の協同組合銀行は政府の支援を必要とするものが1つもなかったことから、環境保全、食糧危機への対応と併せて協同組合の果たしている役割を高く評価したことが指摘されている。
  また大きな流れとして「公的経済システム」「市場経済システム」だけでなく「協同経済システム」の重要性が認識されたことが挙げられる。これを受けて協同組合の国際機関である「国際協同組合同盟(International Co-operative Alliance=ICA)」は、2010年の総会で国連の決定を歓迎し、全会員組織に国際協同組合年に積極的に取り組むよう要請した。
  現在ICA加盟の各種協同組合は90万を越え、10億人の組合員を擁する世界最大の民間組織であり、人々の暮らしの安定と向上のために国際協同組合年を通して、更なる強化、発展を期すことを願って運動を進めようとしている。
  日本では「日本協同組合連絡協議会」(JJC)のもとに「国際協同組合年全国実行委員会」を組織して準備を進め、1月13日に国連大学ウ・タント記念ホー ルで「キックオフ・イベント」を開催して、協同組合年がスタートした。実行委員会は各種協同組合の協力で県段階でも組織されている。特に東日本大震災の被 災県である宮城と福島で取り組まれているのは力強い。各協同組合が一体となって国際協同組合年で目指しているのは、次の3点である。
・協同組合の価値と原則に基づく運営を強化すること。
・協同組合の社会的役割、公益性を発揮すること。
・協同組合の事業と活動についての「見える化」を進めること。
これに基づく具体的行動として、次の3点を挙げている。
①協同組合についての社会的認知度を高める。
②協同組合の設立や発展を促進する。
③協同組合の設立や発展につながる政策を定めるよう政府や関係機関に働きかける。

こうした活動の集約として「協同組合憲章」を制定することとし、実行委員会のもとに「協同組合憲章検討委員会」を設けて進めている。

(2)国際協同組合年の取り組み

 ICAは国際協同組合年の統一スローガンを「Co-operative Enterprises build a better world」(協同組合がよりよい社会を築きます)と決め、「IYCのロゴ」を制定した。同時に専用のホームページを開設して、各国協同組合のIYCへの 取り組み情報を刻々と伝えている。 各国の主な取り組みは次の通りである。
イギリス:IYC公式ウエーブサイトを立ち上げて国連とICAの方針を伝え、それを受けて国内の各協同組合の対応を交流することにした。

 アメリカ:上院議会が全員一致で「2012年を国際協同組合年」に指定することを可決、これを受けて連邦議会代表と協同組合関係者でIYC全国委員会を設置して進めることになった。

 カナダ:政府がIYCを国として支援し、推進することを決定した。これを受けて州段階でも同様の動きをするところが出ている。

 メキシコ:2011年11月14日から18日の5日間、メキシコのカンクンで開催されたICAのIYCのグローバル総会は78カ国から過去最多の 2000人を越す代表が参加した。IYCのキック・オフになるこの総会に来賓として出席したカルデロン大統領は「協同組合はメキシコの開発・発展に貢献し ており、協同組合とIYCの促進に対する支援を約束する」と挨拶したことは、メキシコの協同組合にとって大きな励みとなった。

 オーストラリア:2012年1月1日にIYC記念1㌦コインを発売、記念切手の発売も計画している。連合会は実行委員会を立ち上げ、連邦政府へIYCの活動を推進するために担当部局の指定と予算措置と要求している。

 ニュージーランド:国連総会の決定を支持し、その活動を支援するよう政府に働きかけ、 国会には公式のIYC活動を推進するための財政措置を要請している。 記念切手の発行も計画している。

フインランド:IYCに関する国連の活動を支援するよう政府に働きかけている。また記念の歌と映画を作る計画を進め、青年対象のキャンプの支援や奨学金の 制定を計画している。

シンガポール:IYC公式ウエーブサイトを設定し、記念切手の発行を計画している。

2.協同組合の多様な活動とその役割

 国連の潘基文事務総長はIYCを決定した国連総会で、現状に於ける協同組合の最大の役割は「食糧の安全保障と包括的な金融システムの保障」であると述べた が、その他でも協同組合は多方面に亘って活動を展開している。専門別連合会に組織されているそれらの活動を見てみよう。

(1)食糧生産分野

 農協や漁協が担っている分野で、開発途上国では住民を飢えから守る重要な役割を果たしており、協同組合の基幹部分をなしており、多くの国で食糧確保の中 心を担っている。専門の機構は「国際農業協同組合機構(ICAO)」と「国際漁業協同組合連合(ICFO)」である。
  農協は協同組合の中核を担っている組織であり、先進国、開発途上国を問わず、国民の食糧需要を満たすために重要である。漁協は水産資源の保全と漁場周辺の 広大な地域の環境保全をしつつ、貴重なタンパク源としての魚類を捕獲して消費者に提供する役割を担っている。日本の漁協は魚類の養殖技術の開発と実践面で も大きな役割を果たしている。

(2)消費生活分野

 生協が受け持っている分野である。北欧を始めとしてヨーロッパは伝統的に生協活動が活発であり、いずれの国の生協も高い購買シエアーをもっている。フイ ンランドやスイスのようにシエアーが50%越える国がある。いずれも2つの生協グループで占めている数字である。
  この他スウェーデンやイタリアのシエアーも高い。一時停滞していた生協の創始国イギリスも力を盛り返しつつある。これらの国では店舗政策や品揃えに気を配っているのはもとより、それ以上に組合員、利用者の声を活かした経営に徹している。
  そうしたなかから生協ならではの品質が良くて価格も安い独自企画の商品を生み出し、発展のための利益確保に寄与している。倫理性を貫くフエア・トレードの 経営は生協だけに限らず、協同組合銀行にも生きているが、生協は買い物を通じて毎日組合員と接触しているだけに大きな強みであると云えよう。生協活動の専 門機関は「グローバル生活協同組合委員会(CCW)」である。

(3)金融サービス分野
 国連やIMFも認めているように協同組合銀行は、リーマンショックによる金融の混乱の影響を殆ど受けなかった。投機的な投資や貸付を行わなかったからで ある。ヨーロッパの協同組合銀行は「国際協同組合銀行連盟(ICBA)」と「欧州協同組合銀行協会(EACB)」に加盟している。
  その上位行の総資産は日本のメガバンクに比肩している。「欧州協同組合銀行の概要とその存在感」をみると力量の程が判る。これらの協同組合銀行の健全経営 は国際機関や研究機関から注目されており、金融危機以後これらの機関から多くのレポートが刊行されている。健全性の保持は組合員中心の安定した預金と浮利 を追わない融資方針に加えて、中央機関による会員銀行の監督と検査、グループ全体のリスク管理、そして協同組合らしい相互援助制度によるところが大きい。

(4)共済保険分野
 共済と協同組合保険部門は「国際協同組合保険連合(ICMIF)」に組織されている。これは1922年に設立された機関で71カ国211の組織が加盟しており、収入掛金ベースでみると世界の保険市場の6.1%を占めている。
  日本からはJA共済連(農協)、JF共済連(漁協)全労済、コープ共済生協連など7団体が加盟している。またICMIFの地域組織として「アジア・オセア ニア協会(AOA)」が作られており、営利保険に対して組合員の立場に立った協同組合共済保険としての特色を発揮し、金融危機にさらされることなく健全な 発展を遂げている。

(5)医療保健分野
 協同組合の診療所、病院による医療活動も国際的な展開を見せている。「国際保健協同組合機構(IHCO)」には日本、イギリス、スウェーデン、ベル ギー、スペイン、ロシア、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、マレーシアが加わっている。日本はJA厚生連と日本福祉医療生協連が会員である。
  この他「アジア・太平洋地域保健協同組合協議会(APHCO)」があり、日本以外では韓国、モンゴル、マレーシア、インド、ネパール、スリランカが加入し ている。組合員の立場に立った良心的な医療をどう提供していくかが共通の課題で、お互いに経験交流を重ねながら深めている。

 この他ICAのもとに「国際協同組合住宅機構(ICA Housing)」「国際労働者生産協同組合連合会(CICOPA)」「国際旅行協同組合(TICA)」という組織があって活動している。
 「平和の希求」はICAが設立された時からの基本理念である。1895年のICA設立大会で協同組合は国際平和を希求するという 意向を表明し、1913年の第9回グラスゴー大会では「平和が協同組合発展に不可欠であり、協同組合の発展が世界平和の保証でもある」という平和決議が満 場一致で採択されている。
  戦時中日本の協同組合はICAから離れていたが、復帰後1954年の第19回パリ大会では全国指導農協連(現在のJA全中)と日本生協連は唯一の被爆国の立場から原水爆実験禁止を訴え、平和決議として採択されている。
  その後も日本生協連の提案による平和決議が採択され、その都度国連に報告されている。東西冷戦の最中にあっても協同組合が平和の維持に取り組むことは思想を越えて会員に支持され、国際組織として1度も分裂を経験することがなかったのが誇りである。
  最近では2009年のジュネーブ総会で日生協の山下俊文会長が提案した「核のない平和な国際社会構築のために世界の協同組合の努力を求める」という<平和決議>が採択された。
 「環境保全」への取り組みも協同組合が持続的に進めてきた活動である。ICAジュネーブ総会では4つの全体セッションの内「持続 可能なエネルギー経済に向けて」「気候変動と協同組合の対応」の2つが取り上げられた。後者ではヨーロッパ、アフリカ、中南米での取り組みが紹介された。
  そうして協同組合の地球環境保全キャンペーン「ACT!」を開始することが決められた。日本では土を守り、森を守り、水を守る活動は、農協や森林組合が日 常的に進めてきたことである。またCO2削減は生協が組合員に呼びかけて日常不断に進めていることである。アメリカの全国農村電化協同組合や、インド肥料 農民組合協同組合によるCO2を出さない電気の生産と供給が知られている。自然エネルギーの王国といわれるデンマークの風力発電所の40%は協同組合の経 営と云われている。

3.協同組合の果たすべき課題
 国連国際協同組合年を契機に協同組合が果たすべき課題を考えてみたい。同時に協同組合が自らを省みて糺すべきを糺し、足らざるところを補って、新しい時代を切り開いていく力をつけることが求められる。 ICAはこれまで時代の変わり目に特別委員会を設けて、次の時代に向けて協同組合の在るべき姿を検討してきた。
  ここで検討して纏められたものを総会決定として、世界の協同組合が行動指針として論議し、実践してきたのである。そのなかで1980年のモスクワでの第 27回大会で決定された「西暦2000年における協同組合」は、理念的にその後の協同組合の行き方に大きな影響を与えるものになった。
  ICAの委嘱によって委員会を主催し、その執筆に当たったのはカナダの協同組合指導者であり、ICA中央委員であったアレクサンダー・レイドロー博士で あった。これは30数年を経た現在でもそのまま通じる普遍性をもったものである。今後協同組合の果たすべき役割と課題をこのなかから見出していくことにし たい。「レイドロー報告」として知られるこの報告の要点は次の通りである。         
  現在少しずつ狂気じみた方向へ進んでいる世界のなかで、協同組合こそが正気の島に  なるように努めなければならない。しかし協同組合は「信頼性の危機」「経営の危機」  から「思想上の危機」を迎えているのではないか。その危機を克服するためには、
・協同組合の原点を問い
・協同組合の活動を見直し
・将来の選択を確かなものにする
  ことが重要である。
 「信頼性の危機」は協同組合という考えが多くの人々にとってあまり現実的でないた
めに起きた。しかし時が経つとともに徐々に認められるようになった。
 「経営の危機」は未熟な経営によって協同組合は慢性的な不信に陥り、その事業は時代遅れになる傾向にあった。しかしこの危機も次第に克服され、経営を効率的で近 代的なものに変えていった。
 「思想上の危機」はこの後にやってきた。協同組合の真の目的は何なのか、他の事業 体と違うものとして独自の役割が果たされているのか、が判らなくなっている。危機 の克服のためには、理論や思想を避けて事業を優先するという間違った態度を改めなければならない。
  何故ならばどのような組織や制度も人びとが信じ、支持したいと思う考えに基づいて設立されているからである。シャルル・ジードが云ったように「協同組合は 事業経営を手段として、共通の経済的、社会的および教育的目的を追求する人びとの集まりである」のである。
 こうした考えのもとに協同組合の将来の選択として、「21世紀に向けた4つの優先分野」を提起する。
第1の優先分野:世界の飢えを克服する協同組合
第2の優先分野:生産的労働のための協同組合
第3の優先分野:社会の保護者を目指す協同組合
第4の優先分野:協同組合地域社会の建設
 第1の分野について博士は協同組合がこれまで一番成果を挙げてきたのは、農業と食糧に関する分野であったと指摘している。確かに食糧を生産する農協とそれを消費者に届ける生協は協同組合の二大分野として発展してきた。
  そこで今後の課題として農協と生協が手を携えて加工による食品価値の破壊、過剰包装、浪費、危険な農薬の使用、余剰食糧の処理・貯蔵など農場から食卓までの食品に関する等あらゆる問題を  検討するよう求めている。また世界の協同組合は第三世界の農民や小農の組織を支援する計画に取り組むことを訴えている。こうしたことを通じて世界の飢えを防がねばならないとしている。
 第2の分野は労働者協同組合が担うべき役割を評価し、その発展を期すべきだということである。これまで資本に従属させられていた 労働者が主人公になって、逆に資本を使って仕事興しをすることの重要性を強調したのである。ここではスペインのモンドラゴン協同組合の事例を高く評価して いる。今日ヨーロッパ全土に労働者協同組合が広がっているが、日本では未だ萌芽の域を出ない。今後伸ばしていかなければならない分野である。
 第3の分野では生協が単なる購買施設に甘んじるべきでなく、経済性と倹約を強調しながら消費社会の気取りや浪費を放棄させるべきだとしている。「顧客は 必ずしも正しくない」として、贅沢三昧や甘えに対する悪習や欲望から保護されなければならないとしている。組合員が地域社会への関心を強め、消費者主権の ための生協から自分たちが住む社会を守る生協への発展をという主張である。
 第4の分野では協同組合が新しい地域社会の建設に寄与することを訴えている。都市は多くに住民にとって孤独と阻害の大地である。ただ近くに住んでいると いうだけで、それ以上のきずなは何もない。協同組合の偉大な目的は、地域社会や村落を沢山大都市の中に建設することである。
 ICAは1980年に「2000年の協同組合=21世紀の協同組合」に向けての方向を定めた。しかし時代の変化は予想を越えて大きなものであった。この後世界は激変する時代に入り、協同組合運営も種々の困難に見舞われた。
  「協同組合の思想の危機」を受けて、「協同組合の基本的価値」を検討し、「協同組合のアイデンティティ」を確立しようと、1988年の第29回ストックホ ルム大会でラ-シュ・マルコス会長自ら私案を提起した。レードロー博士が提起した協同組合の信頼の危機がどうして起きたのか、それが依然として克服されないまま危機が迫っているのではないかというのが根底にあってのことであった。
  レイドロー博士の指摘は協同組合は私企業とも国家とも異なり、「経済的目的と社会的目的」をメダルの両面のように一体的に保持しなければならない。しかし 実際にはこの特性を軽視して私企業との競争にのみ走っているのではないかという危惧であった。これを正すためには協同組合の基本的価値は何かということを改めて鮮明にし、創立以来掲げてきた協同組合原則を見直すべきではないかと指摘したのである。
 マルコス会長は①組合員参加②民主主義 ③正直 ④他人への配慮という4つの基本的価値のアイデンティティを提起し、これを巡って討議が行われた。正直といったことは当たり前のことで、これを今更もち出すのは如何なものか。
  他人への配慮も同じようなことでないかという意見がある一方、当たり前のことが果たして協同組合で出来ているのか、組合員は信頼を寄せているのか、といっ た意見も出された。激しく変化している時代にあって協同組合はその特性に合った運営をしているのか、ミスマッチはないのかという疑問が出され、大会決定で 「変化する世界に於ける協同組合の基本的価値」は何かを検討することになった。大会決定を受けてスウェーデン協同組合研究所長のスパン・オーケー・ベーク 氏を主査とする研究プロジェクトに検討が委ねられた。
  これは「変化する世界 協同組合の基本的価値」という「ベーク報告」に纏められて、1992年の第30回東京大会で採択された。これを基に1995年には次のような「協同組合のアイデンティティに関するICA声明」が出された。

 「協同組合のアイデンティティに関するICA声明」
《定 義》協同組合は、共同で所有し、民主的に管理する事業体を通じ、共通の経済的・社会的・文化的ニーズと願いを満たすために自発的に手を結んだ人々の自治的な組織である。
《価 値》協同組合は、自助、自己責任、民主主義、平等、公正、そして連帯の価値を基礎とする。それぞれの創設者の伝統を受け継ぎ、協同組合の組合員は、正直、公開、社会的責任、そして他人への配慮という倫理的価値を信条とする。
《原 則》協同組合原則は、協同組合がその価値を実践に移すための指針である。
<第1原則> 自発的で開かれた組合員制
<第2原則> 組合員による民主的管理
<第3原則> 組合員の経済的参加
<第4原則> 自治と自立
<第5原則> 教育、訓練及び広報
<第6原則> 協同組合間協同
<第7原則> コミュニティへの関与

 新しい協同組合原則は従来のものに修正と補強が加えられてこのようになった。従来は「資本に対する利子の制限」「剰余金の処分」といつた実務的なもの、或いは「政治と宗教」のように協同組合が直接関与すべきでないといったことを定めていた。
  新原則では<第1原則>から<第6原則>まで組合員を基礎に置いて、協同組合の価値を実践するためのものに変えられた。<第7原則>は協同組合が組合員の 間にだけ閉じ込もっているのではなく、進んで地域に貢献して社会的存在になるように定めたものである。
 「1980年大会は不吉な前兆の中に開かれることになる。人類はその歴史の分岐点あるいは転換点にさしかかっている。このような変化の中には、人類がいままでに経験してきた中で最も強烈なものもある。」当時の状況についてレードロー博士はこう記している。
  この後10年を経ない内にソ連・東欧社会主義が崩壊し、社会主義の根本的見直しが始まった。それは国家主導型経済システムの破綻に繋がり、新自由主義の台 頭を招いた。小さい政府、競争至上主義、市場万能主義、マネタリズム、自己責任原則の徹底が招いたものは、深刻な雇用問題、貧富の差の拡大、道徳の退廃と いった負の側面であった。更に地球規模の環境問題とエネルギー危機を招き、アフリカでは飢えのために命を落とす人が後を絶たない。
  30年前に比べて事態は良くなるばかりかますます深刻になっている。それに追い打ちをかけたのが2008年のリーマン・ショックである。その後遺症がEU 圏でのソブリン・ショックを発生させて、世界的な経済危機への危惧を助長している。今やレードロー博士の懸念は拡大して世界を被っているのである。そういうなかで迎えた国際協同組合年には国連の協同組合への大きな期待がかかっている。
  平和な社会を前提とした食と職の保障、金融と経済の安定、健康の保持と不測の事態における安心、環境保全といったことは、先進国はもとより開発途上国を含めて世界的規模で展開されなければならない。これからの協同組合には「レードロー報告」と、そのもとに定められた「協同組合のアイデンティティ」を受け止 めて、着実に実行していくことが求められている。
 協同組合は理念に基いた思想をもって運営される組織である。しかし意見の違いで国際機関としてのICAが分裂の危機に晒されたことは1度もない。東西冷 戦の最中に激しい議論を展開しながらも組織を割る行動はお互いに自制してきた。これが国連のなかの民間諮問機関として重きをおかれてきた理由であり、この ことに協同組合人は誇りをもっている。
  また時代の変化をいち早く捉えて検討し続けてきたのも誇るべき伝統である。ICAは1980年に「21世紀の在り方」を検討し、それに基づいてその後「協 同組合の価値」を見直してアイデンティティを明確にし、原則の改定を行ってきた。大会の発議に基づいてその都度専門家と実務家による研究プロジェクトを組織して検討し、中間段階で原案を会員組織に下ろして意見を求め、最終的に大会での論議を経て決定するという方法を貫いている。
  決定された時点で、方針が会員のものになっているというのが強みである。ICAの歴代の会長に人を得たということもいえる。協同組合の指導者らしく実務家 であると同時に、理想をもった人が多く、学識も豊かであった。1992年の第30回東京大会で「協同組合の基本的価値」を定めたスウェーデン出身のラー シュ・マルコス会長や、3年前に惜しまれつつ亡くなったイタリア出身のイヴアン・バルベリーニ会長を思い出す。
  マルコスさんは開会の会長挨拶の最後を、“古人の跡をもとめず、古人のもとめたる所をもとめよ”という松尾芭蕉の言葉で締め括り、大会に臨む態度を示され た。またバルベリーニさんは80年台末から90年代にかけて激動のなかにあったイタリアの協同組合を躍進に導き、ICA会長としては財政を確立させ、ヨー ロッパに偏ることなく、アジア、アフリカ、中南米に協同組合を広める努力をされた。
  生協総研時代に多忙な日程を割いて来日され、シンポジュウムの講師を務めて戴いたことも忘れられない想い出である。世界の協同組合はこうした指導者の努力 によって発展し、国連国際協同組合年を迎えて時代の先導者の役割を果たしていることを思うと感慨無量である。


スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。