コラボ・コープOB

生協のOB同士で、交流と意見交換を進める場とします。  自分のこと、お互いのこと、生協のこと、世の中のこと、―-協同・平和をめざして。

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市民主体の就労創出  労協センター事業団(ワーカーズコープ)

寄稿

[西村一郎]

震災対応人材育成事業がスタート
 「懇談会を繰り返す中で、何かしたいとか地域に役立ちたいとの声を聞き、自らの力で仕事を立ち上げたい人のいることがわかりました。事業所や全国の仲間もいれば、これからも出会う地域の人々が大きな力になってくれます。皆さんの頑張りが、登米(とめ)市と南三陸町に必要な仕事づくりにきっとなります。そのことによって被災地全体の励ましになるような素敵な事例を、ぜひ一緒につくっていきませんか」
 日本労働者協同組合連合会(労協連)の東北復興本部長である田中羊子さん(40歳)の、凛とした声が会場に流れた。
 2011年10月3日のことであった。宮城県北部にあるNPO法人ワーカーズコープ登米事業所で、「仕事おこし講座」の開講式があった。正面の壁には、「広がれ地域の輪、福祉の担い手みんなの力」と力強く横に手書した紙を貼ってある。市から「緊急雇用創出事業 登米市震災対応人材育成事業(起業型)」をワーカーズコープが受託し、その日は受講する16名の新しい組合員が参加し、田中さんの話の後でそれぞれが自己紹介をした。

 「津波で自宅と仕事を失いました」
 「震災で両親が体調を崩して入院中です」
 「派遣切りにあいました」
 「自分で仕事を起こすしかありません」
 「やり甲斐のある仕事をしたいので、介護タクシーの起業を考えています」
 「大切にしてきた家も職場も流されて、もう失うものは命だけになりました。なくすものはないので、これをチャンスに頑張ります」
 「家に閉じこもっていると疎外感を覚えます。やはり外で働きたいです」
 29歳から62歳までの老若男女が、各々の決意や境遇について語っていた。続いて来賓者から激励の言葉がいくつかあり、最初は登米市産業経済部次長である。
 「この機会に皆さんに起業のノウハウを学んでもらい、力を付けてぜひ復興に協力してください」
 元市議からの話もあった。
 「ロッチデールで原則を作った協同組合を、この震災復興に活かすことは大きな意味があります」
 次にマイクを持った森林組合元参次の竹内信男さん(62歳)からは、ワーカーズコープの応援隊長としての熱いエールがあった。
 「まだ応援隊が少ないので、ぜひ50人ほどに増やしたいものです。新しい取り組みなので苦労もあると思いますが、ぜひ風を巻き起こすように頑張ってください」
 労協連理事長の永戸祐三さんからも歓迎の話があった。
 「生活や地域のために良い仕事をし、社会の明日と希望のために頑張りましょう」
 登米事務所の責任者である青木未知さん(31歳)は、締めくくりの挨拶をした。
 「経験や境遇も様々で、いろいろな方がこうして集まりました。6カ月の講習でどんな仕事が、地域や被災地のために起こすことができるのか、今からワクワクしています。ぜひ成功させるために、皆さんと丁寧に講習を進めていきます」
 地元で有機農業を営む竹内さんが、差し入れをしてくれた自慢のニラ、ナメコ、茗荷、新米などで、参加者は昼食をとりつつ交流して開講式は終わった。
 その後4人増えて20人となった受講生は、週休2日で平日は9時から17時まで勤務し、2012年3月31日まで、月に15万円と規定による交通費が支給される。なお半年間の仕事は、①協同労働で事業を立ち上げるための仕事おこし講座やヘルパー養成講座への参加、②地域の課題をつかみ、地域福祉事業所の立ち上げに主体的に取り組むの2つである。ところで受講生は、1口5万円(分割あり)の出資金を払って労協の組合員に全員がなっている。
 
労協センター事業団(ワーカーズコープ)とは
 労協連合会は、全国的な協同労働の普及と発展、労協や高齢者協同組合の組織的な確立をめざし、加盟団体間の連帯と活動支援や公的セクターとの対応などを行っている。
 その一翼を担うセンター事業団は、日本の労働者協同組合運動のけん引役を果たすため、1982年に労協連の直轄事業として出発した。労働者協同組合のモデルを創り出し、人材の研修・育成につとめて全国の活動を支え、他の労働者協同組合の事業や運動を支援する組織でもある。ビルメンテナンス・物流・緑化などの委託事業、介護保険事業、コミュニティセンターや高齢者福祉センター等の公共施設の管理・運営や、障がい者や路上生活者や若者の就労支援、子育てなどに活動が広がっている。
 こうしたセンター事業団の事業は、2011年3月末現在で組合員5000人、事業所250カ所、事業高144億円となっている。なお法人格の必要な仕事のときに、企業組合労協センター事業団と特定非営利活動法人ワーカーズコープを使い分けて対応している。

協同労働で「生活と地域」復興の仕事へ
 2011年3月30日の労協連理事会は、「協同労働で『生活と地域』復興の仕事へ がんばろう東北 たたかう東北」のタイトルで、以下の6項目の行動提起を確認した。
①全てのとりくみの基礎にケアを貫く
②あらゆる地域の人々や自治体と手をつなぎ、協同労働の全ての力を生かし、心のケア、生活の再建、地域の復興・再生を支える仕事おこしに全力で挑戦しよう
③「生きること」の根本的な問い直しから、人間らしい本物の生活の質、地域や社会のありようを見つめ、できることから自らの手でそのつくりなおしを始めよう
④東北の復興・再生を焦点に、公的訓練就労事業制度の確立と協同労働法制化の実現を
⑤社会連帯機構に東北の復興と再生を支える基金(義援金)をつくり、3ヵ年で10億円を目標に内外に呼びかける
⑥根本が問われる時期だからこそ、本当の協同労働を仲間と深く問い合おう
この方針に沿って具体化が進んだ。
 
東北復興再生本部設置へ
 労協(ワーカーズコープ)連合会は、5月14日に開いた福島全組合員集会で、仙台に東北復興再生本部を置き、田中労協連専務とセンター事業団副理事長が仙台に常駐し、「東北に地域福祉事業所100カ所開設」の方針を掲げ、「仕事おこし」の推進を宣言した。
 労協連と労協センター事業団は、7月15日に仙台の労協センター事業団東北事業本部で東北復興本部発会式を開き、来賓をはじめ103人が参加した。東北常駐メンバーは、「社会を変える東北の取り組みと共にありたい。地域から仕事をおこす方たちに協同労働を届けたい」と決意表明した。

登米事業所
 8月8日に労協の企画書を作成し、8月12日に登米市へ提案して企画が採用となり、9月4日に登米仕事おこし構想会議を開く。9月16日には登米で説明会をスタートさせて参加者を募集し、10月3日の事業開始を迎えた。
 青木さんの話である。
 「8月7日から東北の応援に入って企画書を作り、企画が通ってからは仮設住宅をいくつも訪問して説明会を重ね、仲間が少しずつ広がっていきました。
 それでも、いろいろな事情を抱えて講座を受講する方たちを、自分がまとめていくことや、家族や友人と離れて知らない登米で仕事をすることは不安でした。一方で大きな使命に挑戦したい気持ちもあって、今だからこそ何かを得られるのではと考えました。地元に詳しい竹内さんの応援も大きかったですね」
 見知らぬ土地に入り、ゼロからの出発だから不安があるのも当然である。講座をスタートさせてからも、地域の調査をすると仮設住宅に入る人の家族問題を相談されたり、自治会や被災者からのクレームも出た。毎日が大変で中には辞めたい受講生も出て、皆で話し合い協同労働のルールをあらためて確認した。
 その結果、経験やペースに違いはあるけれど、互いに足りないところは補う気持ちになった。起業を目指す人は、人を育てる労協の理念を理解し、仕事おこし講座や地域調査で出ていた不安が減り前向きになっていった。
 ある受講生の感想文の一部である。
 「こんなに貴重な一か月を過ごした事は、震災のおかげでしょうか。生きて来たことすべてが、無駄にならない事を実感しました。来年がこわいです。自分が知りたい、やってみたいと思っていた事がつながっていた事、人と人との出会いやつながりに無限の可能性がある事、この1か月に今まで学べない事を学ばせて頂けたことに感謝です」
 カリキュラムは12月半ばでヘルパー講座が終わり、いよいよ事業計画づくりに入る。2012年1月~3月は自作の事業計画に沿って、地域福祉事業所づくりに向かい、4月の開所をめざす。障がい者支援、元気な高齢者が働ける場づくり、直売所づくり、木質エネルギー事業など、それぞれの仕事おこしの夢が連携しつつ、東北を始め全国の事業所の先輩たちの応援を受けながら準備している。
 労協の取り組みによって市民主体の就労支援が、確かに被災地において進みつつある。

*写真 「仕事おこし講座」開講式 (「コープソリューション」仕事おこし講座開講式
2012年2月号掲載)

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