コラボ・コープOB

生協のOB同士で、交流と意見交換を進める場とします。  自分のこと、お互いのこと、生協のこと、世の中のこと、―-協同・平和をめざして。

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イギリスの生協の復活の原動力     ~ もう一度社会性をもった運動にチャレンジ

[大友弘巳]

 はじめに
 去る10月3日、「日本型生協の現在と未来~イギリスと日本の協同組合史から考える」と題する関西大学教授杉本貴志氏の講演を聴く機会がありました。この講演は、日本生協連に働く職員の皆さんの自主的な学習組織「協同組合塾」の例会で行われたもので、OBも自由に参加できると聞き、演題に惹かれて参加した次第です。
 これまで、イギリスの生協の復活の要因については、2009年11月に訪欧した欧州生協視察団の報告として日本生協連の芳賀専務がまとめられた4点(「生協運営資料2010年3月号」に掲載)が定見のようになっていたと思われます。
 ① 生協の統合がうまく進み、一国一生協化に向かって急進展していること。
 ② 店舗戦力の大胆な転換(郊外大型店から100坪程度の小型店へのシフト)。
 ③ ブランド統一と店舗イメージの一新。
 ④ 倫理的企業としての事業ポジションの明確化。
 その中でも、④として「倫理的企業としての事業ポジションの明確化」が挙げられ、具体的事例もいくつか紹介されていたのですが、①、②の印象が強く残り、④についての注目が不十分だったことに、今回の講演で気付かされました。

 イギリスの生協運動史概要メモ
 杉本教授からの講義は、ロッチデール以前の協同組合運動の紹介から始まり、あまり知られていない話が次々と飛び出したので、参加者にとっては興味深い内容でした。
 以下その概要です。
① ロッチデール生協より以前に、オウエンによる「協同村」建設の実践が失敗した後にオウエン派の人々による協同の店舗設立の運動があり、1820年代から30年代にかけてイギリス全土の各地に250以上の店舗が作られた。協同組合の店舗という意味ではこれが最初とみるべき。しかしそれらは30年代末には事業の継続が困難となり、壊滅状態となってしまった。

② ロッチデール生協は、オウエン派の失敗の経験から学んで様々な「原則」を定めて運営したことによって成功した。その中でも成功の最大の要因となったのは「市価販売、現金販売と利用高割り戻し」だった。当時の小売業は売り掛けの貸し倒れが経営難の最大の原因だったのだが、ロッチデール生協では現金取引に限ったので、貸し倒れの心配がなくなった。組合員からも、買い物で自動的に貯金ができると人気を得、労働者が初めて「節倹」を学ぶことにもつながり、コープ=割り戻し(devi)というイメージが強烈に根付いた。
しかし、割戻しをすることは、資金蓄積によって協同体を建設し生活全般の協同化を進めるというオウエン派の究極目標を放棄することでもあったし、売り掛けに頼っていた人々にとっては利用できない店舗となり、極貧層の「切り捨て」につながった面もあった。

③ 第1次大戦前後(いまから100年近く前)にイギリスの生協はピークを迎えた。市場シエアでコープは、バターの40%、牛乳の26%、グローサリーの23%、茶や砂糖やチーズの20%、パンの16%、肉の10%を獲得し、最強の小売業となった。

④ 第2次大戦後、チェーンストアの発展が生協の没落の始まりとなった。1957年にはグローサリー市場の22%のシエアを占めていたが、長期低落を続け、40年後の1997年には3.8%にまで落ち込んだ。
生協の没落の原因は、(イ)非効率=ロッチデールの街では4つの生協が競合しあっている一方で空白の地域もあった。不振店の閉鎖など意思決定の遅れもあった。(ロ)組合員の顧客化=割り戻しも他のチェーンのカードによる割引の攻勢にさらされて、威力低下。(ハ)大型店という不得意分野での大手チェーンストアとの対決。

⑤あげくのはて1997年には、レーガンという乗っ取り屋に狙われた。長い歴史の中で蓄えてきた膨大な含み資産に目を付けたレーガンは、組合員に出資金を10倍の価格で買い取ることを申し出た。 彼は過半数の組合員の権利を買い取ったら、総会を開いて、株式会社へ転換することを計画、それに成功して実権を握れば資産を売却して大もうけしようとたくらんだが、役員2人が加担していることが発覚し、法的に許されない不正行為とみなされてご破算となった。
  乗っ取りは何とか避けられたが、生協のイメージの低下は避けられなかった。

⑥ 生協だけでなく90年代のイギリスでは企業の不祥事件が続発したため、コーポレート・ガバナンスの議論が活発となった。21世紀に入り生協も「協同組合連合会『最善行動規範』」を議論し、各生協は点検・報告・改善を進めるため、年一度のステークホルダー報告書、社会的責任報告書を作成することとなった。
こうして、CSR(社会的責任経営)を前面に打ち出すことによって生協の存在意義をアピールすることになり、それが没落から反転攻勢へと転ずる契機となった。

 「事業の中身を改革」したイギリスの生協
 「はじめに」でも述べた通り、イギリスの生協の復活の要因について、私はこれまでは全国的な統合合併が進んだことと、小型店へのシフトが成功したことが主たる要因だったものと受け止めていました。
 ところが今回の杉本教授のお話では、イギリスの生協は、社会的責任経営の検討を進めて、事業の中身の改革に踏み込み、「売り方」と「売るもの」の両方を改革する理念と戦略を立ててそれが成功を納めたたことの重要性を指摘されました。
 「売り方」の改革としては、「巨大スーパーでは不可能な売り方で、巨大スーパーでは求められないものを提供し、社会的責任を果たす」ことをめざして、「大型店競争からの撤退と、地域密着型のコンビニエンス・ストアやポスト・オフイス店舗(郵便局を兼営するミニ店舗)の展開」する戦略がとられ、具体的には、夜間営業(大型店では認められていない)、市街地に住む買い物弱者への貢献、防犯の拠点としての役割など、コミュニティリティラ-として独自の存在意義をアピールしている事例が紹介されました。
 「売るもの」の改革としては「コープで買い物をすることは倫理的であり、社会を変えるための第一歩だ、という舞台を消費者に提供する」ことをめざして、「イギリスの消費者が購買行動によって社会的責任を果たせるような商品の提供」を戦略とし、強力に推進されていることが、豊富な具体的事例で紹介されました。環境問題での先導的役割を果たす、動物愛護を考えない企業とは取引しない、フェアトレード=公正な貿易(再生産可能な価格を保証、児童労働はだめ)などです。 多数の消費者が関心を持っている問題について、社会的責任、倫理的消費というコンセプトでアプローチし、商品の差別化、格別化、卓越性確保に大胆に取り組み、消費者、メディア、世論の支持を得ているのです。
 社会的背景としてEthical Consumer(倫理的消費者)という概念が、マンチェスターの学生グループによって提唱され、組織的な運動として取り組まれていることなども追い風になっており、ロッチデール公正先駆者組合が「公正」と名乗った原点に立ち戻って、「公正」な社会を作るための「きっかけ」作りを事業の中で展開し、「もう一度社会性をもった運動にチャレンジ」する意義を持った取り組みになっていると杉本教授は捉えています。そしてそのことにより、コープ=正しい商売をするというイメージを確立し、倫理的事業の第一人者としての地位・定評を確立し、事業的にも成功(シェア低下に歯止めをかけ、反転・上昇)し、復活への道を切り開くことにつながったと評価しています。
 2000年にCWS(卸売り生協連)とCRS(小売生協連)が合併してCG(コープラティブ・グループ)となり、2001年にはイギリスのすべての生協がCRTG(共同仕入れ機構)に結集することになったという連帯の前進があったことが、上記のような「売り方と」「売るもの」の改革(抜本的な事業改革、事業革新)への取り組みの足並みを揃え、全国的に強力に取り組むことを成功させる基盤整備になったことは間違いないと思われますが、それだけでは事業革新とは言えず、事業の中身の改革にこそもっと光を当てるべきという問題提起と受け止められます。
 杉本教授はさらに、イギリスの生協が社会的事業経営として確固たる存在になってきたことが、「コミュニティを救うコープ」として、協同党・労働党だけでなく保守党からも期待される存在になっていることを紹介し、チャレンジしていくことへの期待を表明され、そのことは小売業としての生協にもできる(例えばイギリスの生協でフェアトレードが爆発的に伸びていることはその事例)ことだとし、「日本の生協ではいかに」、との問いかけからようやく日本の生協へと話が進むことになりました。

 日本の生協への問題提起
 日本の生協についての最初の話題として、日本のフェアトレードへの取り組みがあまりにも僅かであることが紹介され、フェアトレード製品の国民一人当たり年間購買額で、スイス2,949円、イギリス508円に比べ、日本は3円というデータが示されました。
 イギリスでは生協のフェアトレードへの取り組みで、この購買額が急増中とのことで、食糧の多くを輸入に頼っている日本において、生協が輸入食糧の生産段階に遡って様々な問題を検討し、フェアトレードの運動的取り組みを進めることは、社会的役割を果たす取り組みとして、もっと力を入れて取り組む必要があると感じます。
 次に、国内フェアトレードとも言うべき「産直」について、「消費から市場経済を変えようという試み」としての社会的意義が薄れてきているのではないか、現状では、「数量契約や全量引取り、収穫前価格保障」などの事例は少なく、「その都度発注、市場価格にスライドする価格決定」が多く、市場取引と変わらない取り組みが多い実態にあり、事業連合で数量が多くまとまることが産地側の対応を困難にしている問題を指摘されました。農協や生産者からの生協への不信の声が高まっているとのことですので、そうした声に耳を傾け、改善、改革を図ることが必要になっていると思われます。
  「ユニクロ」の社会的企業としての取り組み「障害者雇用、全商品リサイクル、商品への誇り、若い世代から“かっこいい”と思われる事業体、グラミン銀行との提携」などが紹介され、営利企業でもこれだけのことができる事例として示されました。
日本の生協も、食の安全・安心、環境問題、子育て支援、高齢者福祉、買い物弱者支援など、多くの取り組みを進めてきていますが、ステークホルダーをもっと広く捉え、社会的役割を積極的に発揮する立場でもう一度見直し、取り組みを強化することが必要になっていると思われます。

 イギリスの話で予定の時間が大方過ぎてしまい、「日本型生協の現在と未来」について語られる時間が僅かとなって、レジュメに「事業連合時代の困難~大規模化・二重権力化」と書かれていた点に注目していましたが、そのことにたどり着く前に終了となってしまいました。
 終了後の懇談の場で、質問してみたところ、問題は指摘していますが、それをどう解決すべきか、大規模生協同士の県域を超えた合併の是非についてなどについては、杉本教授としてもまだ見解を明快にしていない段階にある、と受け止めました。
 イギリスの生協の話も日本の生協に示唆を与える内容であり、組合員は増えているのに利用が伴わず供給高が低迷を続けている日本の生協として、組合員と消費者・市民からの信頼と支持を回復し、現状を打開していくためには、イギリスと同様、もう一度社会性を持った運動にチャレンジすること、普遍的なテーマで事業を通しても運動性を発揮することが大事なのではないかと考えさせられました。
 その点で、いま圧倒的多数の国民が切実に関心を寄せている福島第一原発の重大事故による放射能汚染問題への対応、今後のエネルギー政策の問題、くらしのあり方の見直しの問題などについて、大方の組合員、国民から信頼され、支持される運動にどう取り組むか、事業を通じてどう対応していくかが、極めて重要になっていることをあらためて強く感じています。

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