コラボ・コープOB

生協のOB同士で、交流と意見交換を進める場とします。  自分のこと、お互いのこと、生協のこと、世の中のこと、―-協同・平和をめざして。

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「フインランドという国と社会的存在としての生協」

「寄稿」

[岡本好廣]

 10月4日に生協総研主宰の「躍進するフインランドの生協に学ぶ」という公開シンポジュウムが日生協で開催された。講師はフインランド生協連国際部長アンネ・サンタマキ氏である。フインランドと同じように北に位置し、人口もほぼ同じである北海道のコープさっぽろが連携を深めており、その招待で来日され、引き続き札幌で講演や組合員の集まりに参加される予定である。いいお婆ちゃんという感じの同氏は多彩な資料を使ってユーモアたっぷりに話しをしてくれた。
 事前に大友さんから講演の内容を纏めて原稿にしてほしいと頼まれていたが、表が中心の資料も膨大である。追って生協総研が『生活協同組合研究』に掲載するということでもあり、ここでは標記のテーマで紹介することにしたい。

1.意外に知られていないフインランド
 私はこの国を実際に訪れたのは2度に過ぎないが、行くたびに好きになって研究を続けてきた。08年、09年と2つの研究会で「フインランドの民族と社会・経済・文化」と題して報告をした。その報告を通して気付いたのは日本では意外とフインランドが知られていない、或いは間違って理解されているということであった。

 先ずフインランドがスカンジナビア3国の1つだと考えている人が多いが、これは間違いである。地図ではそのように見えるが、スカンジナビア3国には国境を接していないデンマークが入って横並びのフインランドは除外されている。また、人種や言語もスウェーデン、デンマーク、ノルウエーには共通性があるが、フインランドはだけは異質である。フインランド人は太古の昔にウラル山脈を西進してやってきた民族だといわれている。政体も他の3国が立憲君主制をとっているが、フインランドは大統領制である。国際関係もフインランドは伝統的に国連重視、EU重視でそれぞれに重要な役割を果たしている。ノルウエーがEUに加盟せず、スウェーデンとデンマークはEUには入っているが、ユーロ圏には入らないというのと立場を異にしている。 
 それでいてフインランドはNATOには加わらず、軍事面では中立政策を堅持している。国際航空便の運航では3国のスカンジナビア航空には参加せず、独自にフインランド航空を運行し、日本からヨーロッパに入る一番早い航空路として重用されている。他社と異なりジャンボ機を使用せず、きめの細かい運営でも定評がある。民族が違い、言葉の共通性がないだけでなく、700年に渡ってスウェーデンとロシアに支配されてきたことがフインランド独自の国民性を育んできたといえる。それが他の3国とは行き方を変えて独自に国際連帯を進めている理由とも云える。人口僅か535万人の国にも関わらずEUのなかでコソボ紛争の解決に努力し、チェチェン紛争を収めるためにも力を尽くした。国連の場ではインドネシアのアチェ和平会議の仲介役も務めた。

2.経済危機の克服と主要産業の転換
 最近はノキアを始め、精密機械を世界に打ち出して科学立国として名をなしているが、元々は農業国で後は豊富な森林資源を利用した木材、パルプ、紙製品と家具の製造が産業の主なものであった。農業といっても耕地が国土の8%しかなく、湖水面積が10%、森林が69%という国土では限界があった。それでも農業は維持しつつ、斜陽化する林産加工品から機械・輸送用機械、電子機器、化学製品へと大きく転換したのは1990年代の終わりから2000年にかけてであった。こコンピューターのOSとしてLinuxを生み出したフインランドの高度な技術力は今や世界のIT業界をリードしている。
 こうした力がフインランドの国際競争力を高め、2002年には総合順位で2位になり、以後も高いランクを保っている。世界経済が停滞する中にあってもフインランド経済は引き続き堅調である。しかし1900年代の初めにフインランドもバブルの影響を受けて深刻な不況に陥り、成長率がマイナスになり、失業率が18%を越えるまでになったことを覚えている人は少ない。この時銀行の破綻に対して政府は公的資金を投入するとともに当時のフインランドマルカを切り下げ、労働組合との間で賃金凍結協定を結び、社会保険関係の給付水準の見直しと保険料の改定を行う等の改革を行い、4年間でもとの成長を取り戻した。この間日本は改革が進まず、「停滞の20年」に陥ってしまったのと対照的である。
 成否を分けたのは政府に対する国民の信頼の違いであろう。フインランド政府が一貫して所得再配分で貧富の差をなくすることに務め、「全員が負担し全員が恩恵を受ける」という「普遍主義に基づく福祉」を進めてきた結果でもある。同時に進めた「教育改革」「産業転換」が成果を発揮して、合わせて「フインランド・モデル」と云われるようになった。 これについては『フインランドを世界一にした100の社会改革』-フインランドのソーシアル・イノベーション-という本が翻訳出版されているので、興味のある方は読まれるようお薦めしたい。

3.フインランドの生協の発展過程と現状
 フインランドの生協は1916年以降SグループとE運動という2グループに分かれて今日に至っている。当初は保守と革新、農村と都市の対立によるものと云われたが、それだけで1世紀近くも分かれたままになっているのは説明がつかない。双方が拮抗するようにして発展してきたので、競い合う中で厳しく両立する基盤が出来てきたのかも知れない。いずれにしても他国の人間があれこれ詮索することではないであろう。今回話しを聴いたのはS グループについてである。
 SグループはSOKという連合会の元に22の単協が結集している。SOKは商品供給を始めとする会員支援事業の他、SOK独自の事業を行っている。事業構造はスパーマーケット、ハイパーマーケット、デパート、専門店の他、ガソリンスタンド、カーディラーと自動車関連事業、旅行・ホテル・レストラン、農業関連事業、銀行等である。スーパーマーケットはS-marketの名称で全生協合わせて428店舗、ハイパーマーケットはPrism と云って72店舗、デパートはSOKOSの名称で22店舗を経営している。この他特徴ある業態としてネイバーフッドストアのSale&Alepaを329店、ワンストップショッピングができるABCサービスステーションストアを108店展開している。この他S-marketやPrismにABC無人ステーションが108店舗併設されているとのことだが、どのように運営されているか、詳細は判らない。販売シエアーは合わせて45%に上る。サンタマキさんが強調したのは90年のシエアーは15.7%でここから組合員中心の運営に変えるともに業態と業務の転換を急速に進めた結果、シエアーが急速に挙がったと云っていた。E運動を加えた生協のシエアーは優に70%を越えるのではなかろうか。文字通り生協大国である。
  特徴的なのは政府が取り組んだ経済改革の時期と、生協が躍進し始めたのがほぼ同じだということである。国を挙げて改革に取り組んでいたときに、生協も組織と業務の体質改善に取り組んだということであろうか。主要品目では食肉80%、酪農品97%、鶏卵45%というシエアーを示している。
 人口535万人に対して組合員は423万人だから組織率は約79%に上る。また職員総数は89,100人、全人口の1.7%に上る。成人の人口比にすると5%に達し、だんとつの雇用者として地域経済に貢献している。2010年の事業高は銀行部門を除いて11,100百万EUR 、ギリシャ危機の影響でユーロの価値が急落しているが、それ以前の1ユーロ120円で換算すると1兆3320億円、経常利益は355億円である。驚くのはボーナスという形で組合員に還元した額が399億6千万円と経常利益を上回っていることで、サンタマキさんはSOKの誇りである云っていた。これは電磁方式の組合員カードによる利用高割り戻しで、多く利用すればするほど還元率が高くなるようになっている。
 SOKの意志決定の仕組みは、単協も連合会も、4年ごとに開かれる組合員代表者会議で監査役会と執行役会(理事会を意味すると思われる)を選び、そこからマネジメントチーム(常勤の経営陣)が選ばれて執行に当たる。組合員は誰でも立候補できる。代表者代表者会議の投票率は42%とのことであった。
 Sグループの使命は「組合員へのサービスと利益の提供」という簡明なものだが、「フインランドにおける重要な雇用者として納税者として奉仕する。地方での意志決定が地域の発展に寄与する。人の顔をした市場経済を代表し、責任ある運営を行う。」と付言している。地域貢献活動や文化活動、スポーツ活動への支援も活発で、赤十字活動、子どものための福祉活動、民族音楽フエスティバル、室内楽フエスティバル、ジャズ公演、ムーミンワールド、サーカス、アートセンター、フインランドサッカー協会等への支援とともに組合員の参加を勧めている。
 SOK執行役会は2011年の見通しとしてユーロ圏の経済環境は厳しいが、フインランドでは需要の拡大が見込まれており、SOK事業は殆どの部門で好調に推移しているとしている。

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