コラボ・コープOB

生協のOB同士で、交流と意見交換を進める場とします。  自分のこと、お互いのこと、生協のこと、世の中のこと、―-協同・平和をめざして。

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日生協・日本のエネルギー政策を考える~論点整理・資料集~の問題点

[加藤善正]
大友さんの首都3生協の合併問題に関する論文は極めて今日的な「生協運動論」であり、現役生協人だけでなく多くの皆さんに是非読んでもらい一緒に考えることができる貴重な提言でもある。いわて生協の常勤役員にもコピーして渡した。
さて、9月28日、北海道・東北地連運営協議会があり、東京電力福島第1原発事故後注目の「日生協・エネルギー政策検討委員会」が作成した「論点整理・資料集」による第1回の議論が行われた。委員会は「まず学習と論議が必要との認識から、必要な基礎的な情報の収集を行い、15の論点にまとめました。15の論点のすべてについて結論を出すことにはなりませんが、論議を進めていくために考えられる論点を可能な限り掲げて整理しました。この資料も参考にしながら、是非様々な場での学習と論議を広げていただきたい」と呼びかけている。芳賀専務は他の地連ではこのパンフの評価が高く、是非北海道・東北でも学習を強めて、意見を寄せて欲しいと強調した。また、このパンフの表紙には、風車と太陽光パネル・ひまわりの写真が使われており、もう、この写真によりこれからの方向性を決めているのではないか、という声も上がっている、と紹介した。

委員会では私をはじめ8名ほどの委員から、このパンフに対する厳しい意見が続出した。私の意見を中心にそのいくつかを紹介したい。
 ① 私は原発事故以来、福島原発事故に関連する書物を10数冊以上読んだりいくつかの講演などを聴いて勉強してきたつもりだが、このパンフは基本的にはこれまでの原発推進派「原子力ムラ」(原発利益共同体)の立場に立つ文脈」に貫かれているといっても良い内容だ。表紙の写真はそのことを隠蔽する意図さえ感じた。(論点1)では、「今後の日本のエネルギー政策に求めたれる基本的視点」として、これまでの「基本法」や「基本計画」を詳しく解説しているが、肝心の「今後の新しい日本のエネルギー政策に求められる基本的視点は何でしょうか」という自らの設問には全く触れていない。協同組合としての「視座・価値」などから、例えば「経済優先よりは人間の命と尊厳(安全性)を基本視点にして」という問いかけもない。

 ②「論点整理」をしたというが、この問題での「論点」とは何か。これまでいわゆる原子力ムラといわれた原発推進の人びとの安全神話に基づく「論理・論点」と、原子力マネーが麻薬のように垂れ流される中で、厳しい闘いをつづけた地元の「原発反対」の人びとや抑圧され排除されながら「放射能・原発の危険性や地震大国日本での事故の危険性」を警鐘乱打してきた学者・研究者等の「論理・論点」があり、その二つの論点を整理するのが「論点整理」ではないか。しかし、パンフで使用しているデーターや資料はほとんど電事連などの推進派の出したものである。
 例えば、(論点10)の発電コスト比較では、立命大学の大島教授の研究・原発のバックエンド費用の記述はあるが、大島先生の発電源別のコスト一覧は示さず、2004年の良く使われているコスト検討委員会の「発電コスト試算結果」の一覧表は明示している。また、菅首相の「OECD50周年記念行事におけるスピーチ」(抜粋)を「コラム」として1ページにわたって紹介しているが、彼は最近の各種インタビューで「福島原発事故以来私のエネルギー政策に対する基本的認識が変わった」と応えているように、かつての政権以上の民主党の原発依存政策の主張をいまさらながらに示している。

 ③(論点3)では原発削減と安定供給確保・環境政策を掲げているが、(論点7・火力発電の今後のあり方)、(論点8・再生エネルギーの普及の可能性)なども含めて、これまでの「推進派」の主張をあくまでベースにして、脱原発論の困難性をいろいろ説明している。例えば、京都大学の小出裕章教授は「原発のウソ・扶桑社新書」で「大量の二酸化炭素を出す原子力産業」などで、原発の「エコ・クリーン」など環境にやさしいという「ウソ」を厳しく糾弾している。また、「JARO(日本広告審査機構)の裁定を無視して続けられた「エコCM」「地球を暖め続ける原発」などでは、原発ではなく科学的な正しい表現でいえば「ウラン核分裂反応は二酸化炭素を出さない」のであり、原発は「海(うみ)温め装置」ともいえ、100万kW原発では三分の二の熱量は海水を使って放出しており、1秒間に約70トンの海水を引き込みその温度を7度C上げてまた海に戻している。日本の河川から海への流入水量は4000億トンであるが、54基の原発が7度C上昇して海の戻す水量は約1000億トンになる計算で、温暖化防止に役立つ原発などといえるはずもない、と断じている。

 ④(論点4・原発を維持していく場合の条件・安全性・廃棄物)、(論点5・核燃サイクルと直接処分)、(論点6・放射能汚染規制のあり方)でも、原発推進機構とでもいうべき「IAEA」の宣言や空想的な「電事連の地層処分の概念図」を示している。さらに、「核燃サイクルの是非と原発の是非とは区別して理解すべき」という論理展開をして、原発が必然的に生み出す使用済み廃棄物の処分と原発そのものの「トイレのないマンション」という汚名を薄めようとしている。20数年間もかけて建設し、当初の7600億円が2兆2千億円にも膨らみながら未だ稼動しない六ヶ所村の再生処理工場がありながら、「原子燃料サイクル推進」という電事連のお先棒を担ぐ始末である。
放射能汚染規制のあり方に関しても、目下、国民的関心事ではあるが原発がある限り発生する事故による放射能の汚染問題であり、エネルギー政策・原発の是非との関係を明示すべきである。特に、今回の事故による様々な事後処理は『お粗末』の一語に尽きるが、その原因は「原発は安全」という神話がある限り、事故後の対処策を準備することすら、原子力ムラからは「安全ではないのか」という批判のもとにすべて葬りされれた「対策」の結果であるといえよう。後手後手にまわる政府や東電の事故対応は、すべて「安全神話」による「事故は起こりえない」という思考停止の結果である。

 ⑤(論点11・電気料金に関わる税制)、(論点12・電力自由化)、においてもこれまでの政府の政策やおかしな実態を紹介しているに過ぎない。電気料金の問題は税制の問題もあるが、世界一高い日本の電気料金を指摘する視点はない。組合員の暮らしや社会的弱者の視座に立てば、この異常な電気料金システムこそ真っ先に解明すべきである。かつては、公共料金としてその改定においては電気企業も「総括原価」を公表し、我々はその中身を分析・研究し私も公聴会などで激しくやりあった経験を何度か持っている。しかし、今ではこうした改定は行なわず「燃料費変動システム」により、こそこそ料金を変動させ、「総括原価」の内容はほとんど利用者に知らせず、経済産業省との癒着の中で決まっている。最近、この総括原価が水増しされて6千億円もの過剰見積もりが露呈されているが、これらはこうした料金決定システムや「総括原価方式」の料金システムに根本的な欠陥があり、原発などコスト(開発先行投資も含めて)が増えれば増えるほど、企業の利益が増大するシステムが糾弾されなければならない。こうした料金システムそのものに、「市場原理の活用」が活かされているはずがない。電力の自由化が進んでいるかのような記述が多いが、すでにマスコミなどでも指摘されているように、これまでの自由化は電力会社にとってはほとんど負荷はない。問題は、「発送電分離」「地域独占」の転換であり、この自由かなくして世界一高い電気料金から、国民のくらしを守ることは出来ないが、この基本的矛盾に切り込む「論点整理」は見えない。

 ⑥(Ⅲ・生協の取り組み)においても、先述の世界一高い電力料金システムに対してはなんら触れず、くらしの見直しを提起するのも不可解である。生協事業とエネルギー問題への取り組みに関しても、CO2削減問題に矮小化しているが、原発がCO2削減に有効という「誤認」を続けているに過ぎない。ここでは日本の生協運動として、長い間、核兵器廃絶・被爆者援護の取り組みを展開してきた我々が、原子力の平和利用という「原始力ムラ」の論理に組して、原子力の危険性、原発の危険性について思考停止状況であったという問題を掘り下げることが求められているのではないか。また、「電力は無制限」「オール電化生活」「物質的豊かさの推進役としての事業の拡大・規模拡大路線」を生協事業として掘り下げることも必要ではないか。

 ⑦最後に、このパンフレットの最大の欠陥は、東京電力福島第1原子力発電所の事故についての記述が、資料の中に申し訳程度にしか記されていないということである。この原発事故の概要も政府や東電の隠蔽的な情報だけでなく、批判的な学者・研究者の指摘も含めて、もっと詳しく解明すべきである。そして何より、いま福島の県民、組合員・消費者・生産者・事業者の被害や苦しみをリアルに紹介して、その現実をベースにこれからのエネルギー政策を検討するのが、もっとも生協らしくあり、科学的な姿勢ではなかろうか。この観点を抜きにして「原子力ムラ」のこれまでのあれこれの政策や論点を並べても、生協らしい、組合員の心に響く学習や議論にはならないのではないか。


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| | 2011年11月08日(Tue)19:14 [EDIT]


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