コラボ・コープOB

生協のOB同士で、交流と意見交換を進める場とします。  自分のこと、お互いのこと、生協のこと、世の中のこと、―-協同・平和をめざして。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

事業革新の道筋にもっと光を

[大友弘巳]

 「英テスコ、日本撤退」、仏「カルフール」に続いて
9月1日付朝日新聞によると、2003年から日本に進出していたイギリスの最大手スーパー「テスコ」(世界の小売業の第4位の巨大企業)が、日本市場からの撤退を発表しました。
 買収していた中堅スーパー「つるかめ」と、直営店「テスコ・エキスプレス」合わせて129店舗を売却することを決めたとのことで、テスコのトップ(CEO)は声明で、「日本では十分な規模のビジネスを打ち立てることができないとの結論に達した。」と述べています。
 2000年に日本へ進出し、2005年に早々と撤退を決めたフランスの「カルフール」(世界の小売業の第2位)に続く事件であり、巨大な売上規模を背景に大量購入で価格を下げ、競争力にするという外資系スーパーの商法が、日本では思うように支持されないし、利益も出せないということが共通の問題だったようです。

 ある商社の流通担当幹部のコメントとして、「日本では小さなスーパーでも大手の傘下に入らず、独自性を保とうとする。(日本の消費志向は)資金力にものを言わせる『資本の論理』が通じず、勝手が違ったのだろう」とみる、と紹介しています。
 2002年に「西友」に資本参加し、その後同社を子会社にしたアメリカのウォルマート(世界の小売業第1位)はまだ頑張っていますが、「西友」は2008年度まで赤字続きだったとのことですから、今でもそれほど利益が出ているとは思えず、我慢の時期が続いているものと推測されます。
 考えてみれば、日本の生協は、巨大な外資のスーパーマーケットチェーンでさえ成功することが難しい競争環境の中で供給事業を展開しているわけで、巨大外資スーパーの失敗の経験からも学ぶことが必要ではないかと思われます。

 日本のスーパーマーケット業界における「競争力」の再確認
 前回の記事「ヤオコーの躍進の原動力」でも述べた通り、日本のスーパーマーケットでは、食品、特に生鮮や惣菜などでは細かい品揃えや鮮度、旬、味覚、風味、安全性などが求められ、それらの実現度が主要な競争力となっていることについて、上記の新聞報道の内容も、それを裏付けるものとなっています。
 アメリカのスーパーマーケットでも、実は、生鮮やデリカテッセン(日本で言えば惣菜)の強さが競争力となっていますし、その点では、アメリカでも企業規模が大きいスーパーマーケットチェーンの店がどこでも優位とは限らず、個店同士の競合ではローカルチェーンの店舗が大手の店舗に勝っている、あるいは共存していることが珍しくありません。
 生鮮食品や、加工度の高いデリカテッセンでは、店舗の現場力(人間力)によって差ができるのはどこの国でもあることと思われます。しかし、店舗の競争力全体の中でのそのことの比重は国によってかなり格差が大きいわけで、それは食文化の違いによっていると考えられます。
 日本では、欧米のスーパーマーケット経営者から見れば「特殊」と感じるほどに、生鮮や惣菜などの鮮度や品質レベル(日本人消費者にとっては当たり前のこと)が求められ、それらが大事な競争力になっており、欧米の巨大スーパーが持つ世界で有数の規模の強みがあまり生かせず、彼らから見ればちっぽけな日本のリージョナルチェーンやローカルチェーンのスーパーとの競争に苦しみ、人員が多くかかり、ロスも多く、利益も出ない、多店化も容易ではないということが重なっていて、投資するメリットがないと見られているということだろうと思われます。 
 その意味では、日本のスーパーマーケット業界は、規模のメリットがあまり通用しない世界と言えるわけで、スーパーマーケット業界でのマスメリットということについて、欧米と日本での違いを吟味しておくことが必要ではないかと考えられます。
 ヨーロッパの生協では、クリティカルマスのメリットが大きいといわれているとのことで、近年、日本の生協でもこの言葉が良く使われていますが、日本の競争条件の中で、商品開発やグロッサリー商品の仕入れ条件の改善以上に、どこまでクリティカルマスの有効性があるのかも、きちんと検証してみる必要がありそうです。

 日本の生協の現状について
 前回、さいたまコープとヤオコーの供給高(売上高)の推移を比較して紹介しましたが、全国の地域生協トータルの供給高の伸び率は、さいたまコープの伸び率よりもさらに低いのが実態です。
 「現代日本生協運動史」及び、今年の日本生協連総会の議案書の<資料集>から数値を拾って、1990年度、2000年度、2010年度の全国の地域生協の供給高を比較してみると以下の通りです。
     1990年度    2000年度   2010年度   00/90対比 10/00対比
 宅配 11,135億円  13,897億円  15,807億円   124.8%    113.7%
 店舗  9.645億円  11,017億円   9,300億円   114.2%    84.4%
 合計 20,780億円  24,914億円   25,107億円   119.9%    100.8%
 00年代の10年間に、総供給高は,僅か0.8%しか伸びておらず、ほぼゼロ成長です。
 宅配事業でも13.7%しか伸びておらず、80年代までとは様変わりです。
 店舗事業は15.6%減少となっており、90年度よりも後退してしまっています。
 この間に組合員数は1.450万人から1,903万人へと31.2%も増えているのですが、組合員一人当たり利用高が大幅に減少しており、組合員の増が供給高の成長にはつながっていない残念な状態です。
 個別生協を見ると、伸び率が低くなったとはいえ供給高で伸びている生協もあるということは、反面、10年前よりも落ち込んでいる生協もあるということであり、経常剰余で赤字の生協もあって、全体として困難化が深まっている中で、生協間の格差も大きくなっていることが分かります。
 それでもまだ大方の生協が赤字に落ちることなく経営を維持できているのは、一つは経費の切り詰めに努力してきたこと、もう一つは、事業連帯の成果(値入率のアップ)によって支えられてきたことが考えられます。
 10年間もゼロ成長が続いているのですから、この二つの効力もそろそろ限度に近づいているのではないかと思われ、「成長」によってこうした状況を突破していくビジョンと戦略が必要になっていることはどこの生協でも感じているところだと思います。
 近年、組合員からの要望、ニーズに積極的に対応するということで、各地の生協で、ネットスーパーや、移動販売車、弁当配達など新しい形態の供給事業が試みられており、長期的に持続可能な事業として確立するまでに至るかどうかが注目されますが、宅配事業の事業革新(イノベーション)の本命ということで言えば、一人当たり利用の伸長についての本格的な取り組みが期待されます。
 全国トータルで落ち込んでいる店舗事業については、2010年度1年間での新規出店は、全国合計22店舗に過ぎず、そのうちコープさっぽろで12店舗、残り10店舗は9生協での出店となっており、コープネットグループではゼロでした。残念ながら、戦略的に計画的に店舗事業の成長発展に取り組んでいる生協は極少ないのが実態と思われます。
 生協の店舗事業が落ち込んでいる最大の原因は、生鮮、惣菜などの主力商品でスーパーマーケットとの競争に負けていることにあると思われ、特に00年代以後は、ヤオコーのような、地域に根ざして台頭してきているローカル乃至リージョナルチェーンに負けていることが全国的に多くなっているのではないでしょうか。
 そうした変化の下で、店舗事業を成功させる事業革新の注目すべき事例は、この間紹介してきた福井県民生協やヤオコーの経験に見られました。どちらも、店ごとに地域で一番支持されるようになることを目指している点で共通していますし、利用者から信頼される質的レベルを実現するのは店舗の現場力と考えられている点でも一致しており、理念と戦略の整合性したストーリーが明確な中で、現場の職員が自ら取り組みの主人公となって進めている点でも共通しています。

 見えない!、「事業革新の道筋」
 前回、文章があまり長くなったため、コープネット3生協の「『新しい生協をめざして 検討報告(案)』からは、ヤオコーのような理念と戦略が整合したストーリーは読み取れませんでした」とだけ述べて終わりにし、その内容には触れませんでしたが、ここで続きを述べたいと思います。
 最も深刻な状況にある店舗事業について、「新しい生協をめざして 検討報告(案)」では、「現状の課題」として、「大型店舗事業の赤字構造からの脱却、供給高の伸長は大きく望めない情勢のもと、徹底したコスト構造改革に取り組む」「(とともに)事業の革新が急がれます」と二つの課題が挙げられています。
 次に、「組織合同をめざす意義」の中では、「店舗事業では、事業として黒字化することが必須の課題です。経費率を圧縮し店舗のチェーン展開を可能にする条件を整え」と、「地域一番店への多様な取り組みを発展させ、組合員から地域に根ざした最も信頼される店づくりをめざします」の二つが掲げられており、これは言葉を変えているだけで、「現状の課題」と同じことの繰り返しです。(事業の革新の中身が「地域一番店への多様な取り組み」であることが表現されてはいます)
 そして、「新しい生協のありたい姿」では、一挙に飛躍して、「『日本を食卓から元気にしたい』を社会に発信し、食の安全・安心をさらに高め、品質管理・危機管理の強化、組合員・消費者への情報発信、食糧自給力向上、食べるたいせつ(食育)などに取り組み、安心・信頼の生協として最も信頼される組織をめざします」、「ふだんのくらしに貢献する利用しやすい価格(安さ)・おいしさが実感できる品揃えと買いやすい売場を実現し、地域で信頼される生協のスーパーマーケットとして『地域一番店』をめざします」と、「てんこ盛り」と感じるほど沢山並べ立てられています。
 問題は、「現状の課題」と「ありたい姿」の間には、あまりにも大きなギャップがあり、どうしたら現状を克服して「ありたい姿」を実現できるのかの道筋が見えないことです。
 「現状の課題」に対応する、コスト構造改革(経費率の圧縮)や赤字克服(黒字化)のための戦略や道筋はいっさい示されていません。赤字店舗の閉鎖や人員削減などは、組合員や職員が最も関心を持っていることであるにも関わらず、やるともやらないとも書かれていません。それにもかかわらず、「ありたい姿」で、多くのことを並べたてられても、それらが整合性を持ってまともに検討されているとは信じられませんし、なるほどできそうだとも感じられないことです。
 事業革新の要の問題となる、本部と現場の関係についても、いろいろ意見の違いがあるにもかかわらず、現状の総括がされていませんし、方向性も示されていません。そんなわけで、残念ながら「ありたい姿」には、リアリズムが欠けているといわざるを得ません。
 ヤオコーのような整合性を持った「理念と戦略」が練り上げられ、誰にでも理解できるストーリーが明示され、組合員も職員も納得して協力し合う状況が作れなければ、現状を打開する事業革新を成功させることは難しく、「ありたい姿」の実現は困難と思われ、このままでは、「ありたい姿」は単なる「願望」で終わってしまうのではないかと懸念されます。
 本来、事業革新の取り組みと合併の推進は直接的には関係ありません。コープみやざきや福井県民生協の事例を見ても、事業革新は合併など無縁のところで進んでいます。
 事業革新は、合併を進めるかどうかに関係なく、待ったなしに進めて行かなければならないテーマです。
 事業革新を成功させるためには、トップが「理念と戦略」を練り上げてリードしていくことは必要ですが、それも現場発の情報を受け止めながら進めるべきことであり、実際に現場の仕事の中で事業革新を進めていくのは多数の職員です。
 大勢のパートさんも含めた職員たちが確信を持って進めていくようになるためには、道筋(ストーリー)が明快で納得できる内容で示されていなければなければならないことが、コープみやざき、福井県民生協、ヤオコーに共通した教訓でした。
 生協は素晴らしい理念を掲げているのですが、事業革新について、その理念と整合した諸戦略に裏打ちされた道筋の探究が不十分、あるいはその実践が不徹底であることが弱点になっているのではないでしょうか。
 「事業革新の道筋にもっと光を」と切に期待する次第です。

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。