コラボ・コープOB

生協のOB同士で、交流と意見交換を進める場とします。  自分のこと、お互いのこと、生協のこと、世の中のこと、―-協同・平和をめざして。

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ヤオコーの躍進の原動力 ~一つひとつの店を地域一番にしていく「理念と戦略」

[大友弘巳]

スーパーマーケットチェーンの雄となった「ヤオコー」
 「しまむらとヤオコー」という本を読んで、特にヤオコーの躍進ぶりと、それをもたらした原動力となっている「理念と戦略」の明快さと実効性に衝撃を受けました。
 生協もヤオコーも、1970年まではどちらも限られた地域内での小さな存在でしたが、その後の40年間の間に互いに発展し、今日に至った歴史を持っています。 これまでも競合関係はありましたし、今や埼玉県内のいたるところでコープの店舗と競合する存在となっていて、今後もさいたまコープの供給事業に対して大きな影響を及ぼす可能性が高いヤオコーのことは、OBにとっても大変気にかかります。
 70年代と80年代は、生協の方が先行して発展していた時期で、1990年には、さいたまコープの供給高は720億円(店舗は50店舗で320億円)に対し、ヤオコーは25店舗で売上高400億円ほどでした。

 2000年度は、さいたまコープの供給高は906億円(店舗は59店舗で377億円)に対し、ヤオコーは60店舗ほど、売上高は900億円強と、ほぼ同じ規模になりました。
 さいたまコープは、90年代にコープネット事業連合の設立に参画して事業連帯を開始し、スーパーマーケット型の店舗作りを進めましたが、無店舗事業(宅配事業)の伸び率鈍化とミニコープなど既存店舗の供給の落ち込みが続き、成長速度が急速に鈍化したのに対し、ヤオコーは店舗の売り場面積の拡大と新店作りを着々と進めて成長速度を高め、2000年には売上規模でさいたまコープに追いついたのでした。
 2010年度は、ヤオコーの店舗数110店ほど、売上高2,000億円に対して、さいたまコープの供給高は1,018億円(店舗は53店で406億円)にとどまりました。
 さいたまコープの宅配事業の成長率は10年間で16%、店舗事業では、スーパーマーケット型の新店舗を9店舗作ったにも関わらず、総店舗数で6店舗減少している(ミニコープの閉店が多い)こともあり、既存店の供給の落ち込みが止まらない中で、10年間での供給高の成長率は僅か8%に過ぎません。ヤオコーは、10年間で店舗数は1.8倍、売上高では2.2倍へと躍進し続けており、さいたまコープの店舗事業との何よりの違いは、1店舗あたりの売上高が多く、しかも更に伸び続けていることです。
 そのことがヤオコーの経常利益率を4%前後の高い水準で安定的に維持することにつながっており、更なる成長のエネルギーにもなっているわけで、売上規模で2倍(店舗事業だけでは5倍)の格差が付いてしまったこと以上に、経営体質を含めた事業力、競争力で、ヤオコーとの力の差が大きく開いてしまったことに衝撃を受けました。
 ヤオコーのホームページによると、現在の店舗113店舗の所在地の内訳は、以下の通りです。
   埼玉県=70、群馬県=12、栃木県=5、茨城県=7、千葉県=15、東京都=3、
   神奈川県=1
 埼玉県のローカルチェーンとして発展してきて、いまやリージョナル・チェーンとして1都6県へ本格的に店舗を広げていく段階に入りつつあり、とりわけ、これから東京都への出店が増えていくことが予想されます。
 スーパーマーケットチェーンとして発展してきた先輩格の企業の多くがイオングループやセブン&アイグループの傘下に入ってしまっている現在、独立したスーパーマーケットチェーンとしては、関東では、いまやヤオコーが雄となっており、2009年から、日本スーパーマーケット協会の会長にヤオコー会長の川野幸夫氏が選ばれて就任しています。
 なぜヤオコーがこのように躍進できたのか、その原動力になっている企業理念 経営理念と組織作り、出店戦略、経営戦略など、著者が書かれていることを4点に整理してみた内容を紹介するとともに、ヤオコーが実現しつつある「一つひとつの店舗を地域一番店にしていく」ことは、チェーンストアシステムの新しいモデル作りであり、スーパーマーケットチェーンのイノベーション(革新)と受け止められることについて述べたいと思います。
 
ヤオコーの理念と戦略
 ヤオコー躍進の原動力となった理念と戦略について、著者の小川孔輔氏の文章を引用しながら、以下の4点にまとめてみました。
①「日本一の食品スーパーマーケット」「価値提案型企業」を目指す「企業理念」。
 ヤオコーは、豊かな食生活が提案できる「日本一の食品スーパーマーケット」を目指した。
 ヤオコーで買い物をすると、主婦は夕食の献立に頭を悩ますことがない(そんな存在)。
 そのための仕組み作りを(食品スーパーに専念して)進めてきた。
 ディスカウント路線と一線を画す。(店頭の賑わいを見れば、ディスカウントに依存しない店舗経営のよさが分かる)
 豊かな食生活を提案する「価値提案型企業」としてのポジションを崩さない。
②「個店経営」「分権的な経営」を経営理念とする。(働く人のモチベーションを高め、地元密着型の活気ある売り場を作る事を競争力と考える)
  「個店経営」という経営理念―――チェーンストア経営の常識とは反する考え方だが、 できるだけ店舗に自主性を持たせて、店ごとに品揃えを変えることをいとわない。
 ヤオコーは、現場に権限を委譲する「分権的な経営」を特色としている。バイヤーや店長に仕事を任せるが、そのぶん、自分たちの頭で仕事のやり方を考えさせる。
 ヤオコーでは、生鮮品などについては、一部商品の仕入れを店舗に任せている。商品の仕入れを画一化せずに、店長に仕事を任せて、地元密着型の活気ある売り場を作ることを推奨している。(中之条店のメニュー提案の取り組み、料理の大量陳列など)
 生鮮品や惣菜などの扱いについては、生鮮加工センターから各店舗に運ぶだけの「セントラルキッチン方式」一辺倒にはしない。
 あえて作業効率を犠牲にしてでも、店内で食材を加工できる余地を残しておく。
 最終加工のプロセスを店内に残しているのは、働く人のモチベーションを高め、来店する顧客には商品の新鮮さと売り場の賑わいを提供するためである。
 こうした経営の考え方は、パート社員(ヤオコーでは「パートナーさん」と呼ぶ)の活用にも及んでいる。
 惣菜のメニュー開発や商品のプレゼンテーションには、パート従業員の知恵を積極的に活用している。
③出店戦略は 着実な出店ペースと、近隣型ショッピングセンター作り
  08年に100店の大台に乗ったが、東京都と神奈川県に出店したのは最近のこと。06年に東京都(稲城市)に初出店、10年10月神奈川県(相模原市)に初出店。
  出店速度はゆるやかであり、店舗の出店地域は、今でも関東圏にとどまっている。
  92年以降に出店したヤオコーの店は、ほとんどがいまでも営業を続けている。(2009年3月期に3店舗を閉鎖しているが、その場合でも、老朽化して手狭になった店舗施設を増築するためか、自社競合を避けるための、店舗移転である。)
  ヤオコーの長期経営計画には、「20年後をめどに5百店舗、売上高1兆円を目指す」とあるが、関東圏以外に広げる計画はいまのところない。 首都圏にスーパーマーケットを展開する同業者の間では、ヤオコーの南下はかなりの脅威だと見られている。
  近隣型(ネバーフッドタイプ)ショッピングセンター作りを、確実に成功させてきた。(以下の店舗が、ステップアップを積み重ねる節目となってきた)
  88年、若葉店 1階にヤオコー、2階・3階にはオリンピックをキーテナントとし、その他、生活全般をカバーするのに必要なテナントを配置。
  94年、狭山店 本格的な大型SC(ショッピングセンター)
  03年 川越南古谷店 総売り場面積5万3,000坪のSC。ネバーフッド型というより、もっと商圏が広いコミュニティ型といえる規模。
  そして2010年、小商圏対応の小型店(売り場450坪)の実験に着手。
  所沢美原店が(実際の売り場は570坪あるが)その実験店とされている。
  この小型店は、地価が高く、広い売場面積が確保しにくい東京都内への出店を目指す戦略を考えての実験とされている。
④堅実な経営スタイル
  この20年間では、特別な一時期を除くと、売上高成長率が年間10~15%でほぼ一定している
  「10%巡航速度の経営」の考え方、無理をしない心地よいスピードで成長を続けている。
  川野会長によると、「従業員と会社の力量を考えると、わが社の場合は、10%程度の成長率が、気持ちよく会社を発展させる限界の速度だ」ということらしい
  新しいことに取り組む「進取の気性」を持ちながら、決して無理をしない「堅実な経営」。

一つひとつの店舗を地域一番店にしていく、ヤオコーの理念と戦略の整合性と実効性
 上記のような内容は、これまでも雑誌などでいろいろと紹介されてきたことと思いますが、このようにまとめてレポートされたのを読むと、全体像が明確となり、ヤオコーの企業理念、経営理念と組織作り、出店戦略、経営戦略などが、相互に整合し、一貫性を持って進められてきたことが感じられ、以下のようなストーリーが成り立っていると受け止められます。
  ヤオコーが目指すものは、日本一の食品スーパーマーケットになることであり(それは店舗数や売上規模ということでの日本一ではなく)、「豊かな食生活への役立ち」という点での日本一になることである(それは「質」的な日本一ということであり、地域毎の競争力での一番ということにもなる)。
  そのためには、生鮮や惣菜、ベーカリーなど、インストア加工を基本とする生鮮強化型の店舗作りに集中する(既存店も増改築して実現)。また、品揃えや仕入れで地域性にも積極的に対応する。同時に、利便性の面やシナジー効果としての競争力を確保するためには、ショッピングセンター形成を重視して進める。
  スーパーマーケットとして日本一の「質」の実現は売り場での努力に負うところが大きい。従って、売場で働く人たち(数の上では圧倒的にパートタイマーが多い)のモチベーションが高くなるような店舗運営が重要であり、一人ひとりが自分の頭で考え、工夫し、価値を作りだす喜びを持てるような組織運営を推奨する。そのためには分権的運営を組織風土として定着させる。
しかも、同時に、経営的な整合性を確保するためには、「個店経営」として経常利益確保の責任を持たせ、経営責任意識を持って頑張って働いてもらう。

  一見するとチェーンストア理論の否定もしくは逸脱のように感じられますが、生鮮食品、さらには惣菜、ベーカリーなど加工度の高い食材(料理)について、鮮度や安全性はもちろん、旬、味覚、風味などについての期待水準が高い消費者が増えてきた中で、本部主導、マニュアル厳守型の旧来のチェーンストア理論による運営では競争に耐えられなくなっており、業績をあげている他のスーパーマーケットチェーンの多くでも、現場対応力の強化など似たようなことが試みられています。
  そうした中、ヤオコーが、理念と諸戦略のすべてを集中して、一つひとつの店舗を地域一番店にしていく、競争力の強いチェーンストアのトータルの仕組み作りに果敢に挑戦し、成功しつつある、と受け止めるのが妥当と思われます。
  著者の小川氏も、「1985年(昭和60)に始まる成長の25年間でヤオコーがめざしてきたのは、①(単純な)セルフサービスからの脱却、②(標準化をベースにしながら)店舗への権限委譲、③(地元野菜の仕入れなど)商品調達の分権化である。」と記しています。
  このことは、チェーンストアの新たなモデルを創造する取り組みと見ることができ、しかもこれほどまでの成功を納めているということは、ヤオコーはスーパーマーケットチェーンとしてのイノベーションを成し遂げつつあると観るのが妥当であり、旧来発想のチェーンストアでは歯が立たない存在になってきていると思われます。
 さいたまコープと、コープネットグループにとっては、ヤオコーは避けることのできない身近な競争相手であり、ヤオコーとどう向き合うか、ヤオコーに優る理念と戦略を立て、店舗事業の現状を打開する革新(イノベーション)に成功しなければ、将来は厳しいと懸念されます。
 ヤオコーが、個店経営、分権的運営を唱えて成功を収めている時に、さいたまコープとコープネットグループが「首都圏3生協の合併」を急ぐようなことが、ヤオコーに立ち向かえる力を作ることになるのか、熟慮し直すことが必要と思われます。
  「3生協組織合同協議会」が取りまとめた、「新しい生協を目指して 検討報告(案)」という資料を読んだ限りでは、ヤオコーのような、「理念と戦略が整合したストーリー」は読み取れず、これでは職員も確信をもてないでしょうし、組合員からの理解と納得を得ることも難しいのではないか、としか考えられません。

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