コラボ・コープOB

生協のOB同士で、交流と意見交換を進める場とします。  自分のこと、お互いのこと、生協のこと、世の中のこと、―-協同・平和をめざして。

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「こうべからのメッセージ」に学ぶ 

「寄稿」

[西村一郎]

 
  災害時の生協の役割
 2011年3月11日午後2時46分に、東北地方の太平洋沖でマグニチュード9.0という巨大な地震が発生した。いわゆる東日本大震災である。
 茨城県南部の我が家では、震度6弱で初体験の激しい揺れとなった。真っすぐに立っていることができず、本棚が倒れ食器が飛び散る中で心底恐怖を感じた。家族に怪我はなく家屋の破損もなかったが、近所では屋根の瓦がはがれ、塀の倒れた家が何軒かあった。地域ではすぐに停電となったので、夜はローソクのもとでラジオから地震情報を集めた。やっと翌朝になって電気が通じ、テレビの画面を見て息を飲んだ。NHKだけでなく全てのテレビ局は一般の放送を中止し、現地の生々しい被災状況を放映していた。
 強い地震による家屋や山の崩壊だけでなく、10mをこえる高さにもなったという巨大な津波によって、全滅した集落がいくつもある。襲い掛かる津波に、家屋や車が次々と押し流され、さらには逃げ惑う人々の映像の前で、ただ呆然と見つめるだけであった。
 日を追うに連れて死者と行方不明者の数が増え、宮城県だけでその数は万単位になるとのことだから、いったいどれくらいの被害なのだろうか。全壊した役場もいくつかあるそうなので、正確な被害状況を把握するにはかなりの時間を要することになりそうだ。さらには強い余震が続き、他方で福島原発の拡大する事故は新たな不安を投げかけている。

 いずれにせよ今回の地震で甚大な被害を受け、復興にはこれまでの災害時にない時間と費用と労力を要することになるだろう。社会的な役割を求められている生協にとっても、組合員の内外から期待が高まっている。
 今回の地震の被害に対応する生協の課題を考えるに当たって、1995年の阪神淡路大震災のときに、コープこうべの取り組みはいくつものヒントになる。「被災地に生協あり」と新聞で報道された豊富な実践があった。そのときの210名に及ぶ被災者の体験をふまえて、コープこうべのまとめた貴重な冊子「こうべからのメッセージ 阪神・淡路大震災を体験して」から、全国の生協が学ぶべきことはいくつもあるので紹介したい。

「こうべからのメッセージ」の概要
 58ページの冊子「こうべからのメッセージ」は、震災のあった1995年6月にコープこうべくらし創造本部が編集した。「はじめに」の中で以下のように触れ、教訓の共有化を呼びかけている。
 「未曾有の震災を体験して、人間の生きるための強さや、思いやりと心の豊かさが大切であることも改めて実感しました。さらに、これまでの地震に関する常識がいかに甘かったかということ、日ごろの備えはどうしなければならないかということ、いざという時の対応など、震災体験の中に多くの教訓を見ることができます」
具体的には以下の構成である。
・ グラッときた時
・ 余震に備えて
・ 役に立ったグッズ
・ ライフラインが途絶えて:水を手に入れる、作る・食べる・片付ける、トイレを流す、 
洗濯する、入浴する、明かりをつける、寒さをしのぐ、ゴミを捨てる、交通、連絡をとる、生活情報を集める、家族が支え合う
・ 人と人が支え合う
・ ボランティア
・ 私たちの提言
・ 手紙
・ 地震10カ条
・ 資料
 どの項目も組合員の体験に基づいて書いてあり、具体的でかつ実践的である。阪神・淡路大震災に比べて今回の東日本大震災は、地震よりも津波の被害が大きいし、さらには原発事故もあって状況は異なるが、冊子「こうべからのメッセージ」から学ぶことはいくつもある。

万が一に備えて
 日頃から万が一への備えが極めて重要である。冊子では「余震に備えて」として、地震直後の家族の約束ごとや寝る時の注意に触れ、さらに室内の工夫として以下の6点をあげている。
① 高いところにモノを置かない
② 家具は低くする
③ 固定する
④ 配置を変える
⑤ グラつきや隙間をなくす
⑥ 飛び散りを防止する
 また非常袋に入れると重宝な物については、「役に立ったグッズ」として優先順に次の20品を紹介している。
懐中電灯、食料品、ラップ、ビニール袋、小型ラジオ、トイレットペーパー、電池、ウエットティッシュ、手袋・軍手、小銭、使い捨てカイロ、カセットコンロ、下着、薬、紙コップ、飲料水、アルミ箔、紙皿、生理用品、帽子
どれもが万が一のとき大いに役立つ物である。さらには手近にあるものを活用することや、持病のある人や赤ちゃんなどへの対応も忘れずにすることも書いてあるから親切である。

万が一になったとき
 冊子では「ライフラインが途絶えて」として、どのようにして非常時の中でも生きるのかについての知恵を細かくまとめてある。日頃は当たり前の水道や電気やガスの供給が、災害時にはストップしてしまうことが多い。どれも大切なライフラインであるが、その中でも第一に重要なのは水であり、飲む水だけでなく、洗う水や流す水などを手に入れることである。
 第二には食事で、「作る・食べる・片付ける」として、いかに効率良く調理して食べてから片付けるかについてまとめている。
 他にも暮らしに欠かすことのできないトイレ・洗濯・入浴・照明・防寒・ゴミ処理・交通・連絡・生活情報を集める・家族の支えについて、貴重なチェックポイントイを具体的に触れているので参考になる。

人と人の支え
 この冊子の優れている一つが、災害時における物の確保だけでなく、精神面での絆を重視していることで、具体的には「人と人が支え合う1,2」として貴重な体験などをまとめている。復興までには、残念ながら数ヵ月から数年かかることも少なくない。そのため不安や心配事が増加し、メンタル面での支え合いは極めて大切になってくる。
 「助け合い、支え合う命」の小見出しで、「五千数百名の生命をひとのみにした今回の大震災では、紙一重で助かった人もたくさんいました。警察も消防も出動しないうえに、自衛隊の援助もまだなかった直後の時間を、私たちはその地域に住む人たちと心を一つにして行動できたことを誇りに思います」と触れ、いかに隣近所における人と人の繋がりが大切であるか強調している。
 他にも「身にしみた人の温かさ」や「生活共同体・ご近所の輪」や「私のネットワーク再認識」において、震災の中での教訓をまとめている。
 被災者向けだけでなく支援するボランティアについても、4ページを使って大切な事例を整理してあるので、今回であれば被災した生協だけでなく支援する生協にとっても大いに参考となる。
 
生協の総力をあげて被災者の支援を
 生協の目的は、生協法第1条で「国民の生活の安定と生活文化の向上」とあり、活動の対象を組合員だけに限定していない。今回の震災では、東北を中心として多くの国民が被災されて困っているので、これを地元の生協はもちろんだし、全国の生協が総力をあげて支援することは生協の社会的使命でもある。
 被災者に対する生協の支援の第一は、通常の業務をできるだけ滞りなくおこなうことであり、地域生協であれば食料品類の供給や共済の給付などだし、医療福祉生協では医療や福祉サービスの提供である。大学生協や学校生協では、勉学の環境を守る事業の役割が大きい。被災地の生協では、ライフラインに支障をきたし、かつ被災された職員もいる中での事業であり、大きな困難を伴うがぜひ健康に留意し頑張って欲しい。
 第二は、人材や物資を含めて全国からの支援である。すでに全国各地の生協で募金活動を含めて動き始めているし、日本生協連や生協労連では対策本部をいち早く立ち上げ、会員に対して支援の訴えや情報の共有化などを進めている。各地からの支援物資も、被災地に届きつつある。それぞれの支援の輪に、一人でも多くの組合員や職員や労組員のさらなる参加が求められている。生きるギリギリの条件の下で頑張っている被災者から、支援することを通して、いつかは我が身となる私たちが学ぶことは多い。
 今回の大惨事の中で、被災者一人ひとりの生活の安定と生活文化を大切にする生協の役割が、これまでになく大きく求められている。コープこうべの教訓に学びつつ、心身の健康を守りながら人と人の絆を結ぶ新しい震災文化の創造が、全国の生協人に急務となっている。
 
写真 冊子「こうべからのメッセージ」
冊子「こうべからのメッセージ」

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