コラボ・コープOB

生協のOB同士で、交流と意見交換を進める場とします。  自分のこと、お互いのこと、生協のこと、世の中のこと、―-協同・平和をめざして。

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生協総研の研究集会に参加して

斎藤嘉璋

助け合い・協同の喪失社会でーー

 先月、生協総研の全国研究集会「経済危機とくらしー生協の理念と地域社会との協働」に参加した。そこで印象に残ったことを少し書かせていただく。一つは日本社会の現状認識についてであり、2つは理念と実践に関してである。
 日本の現状については3人の講師(神野直彦東大名誉教授、宮本太郎北大教授、橘川武郎東大教授)ともある種の危機にあるとの認識では共通しており、その克服の道をそれぞれが語られた。神野教授は「奪い合い」戦略のもとでの「市場拡大」から「分かち合い」戦略のもとでの「社会拡大」へ、税・財政問題をふくむ「希望の構想」を述べられた。「分かち合いで危機の克服」を主張する神野教授は「人々は競争ではなく協同するのが原点」とし協同組合への期待も述べた。(教授は現政権の税制調査会の専門委員会委員長であり「強い財政、強い社会保障、強い経済」の考えや専門委員会の「論議の中間的な整理」も示されたが、ここではそれへの感想は省略。)
 宮本教授は現在の日本を「総合的危機」にあるとし、その克服のための「参加とアクティベーション」について述べられた。総合的危機の内容として①制度解体(日本型経営の衰退―雇用、生活保障の解体、金融優位型資本主義の行き詰まり、雇用者報酬の実質減など)、②社会・人口変容(生産年齢人口、出産年齢女性の減少、共働きと家族の変容、失業、未婚などと「無縁社会」化、貧困化)、③政治麻痺(行政・政治不信、財政危機など)が挙げられた。印象的だったのは職に就けない若者の増、結婚できない(しない)、婚期の遅れといった「無縁社会」化が「貧困化」と並行して進行しているという指摘。もっとショックだったのは、そのような状況のもとで日本人の「助け合い」の精神は諸外国にくらべ非常に劣っているという指摘だった。

 最も信頼関係の高い家族においても高齢者をめぐり、幼児をめぐり悲惨な出来事が報道されることが多い。職場でも地域でも絆は弱くなり、官僚不信、政治不信から頼りにすべき「公共の福祉」にも不信は広がっている。宮本教授が専門とし、よく知っているスエーデンなどヨーロッパ諸国は社会の基礎に「助け合い」と「信頼」関係があり、日本ではその基本が崩れているという指摘だった。
 講師の講演のあと「地域社会との協働に生協の理念をどういかすか」のパネルディスカッションだった。さいたまコープの佐藤理事長からは「地域に密着した事業と活動の展開」のため「地域の単位を行政区にし」、「地域コミニティの持続可能な発展に寄与する」ため社会貢献活動も4つの分野で進めていること、さらに地域福祉の充実にむけ「班やグループ」の見直しをふくめ取り組みを強めることなどが報告された。コープさっぽろの吉田部長からは「離島・過疎地への積極的な対応」として、宅配の展開、出店(赤平町)や買い物バスの展開など「買い物難民を出さない」取り組みなどが報告された。
 今回、もっとも考えさせられたのは岩手消費者信用生協の上田専務の報告だった。同生協は1969年に「相互扶助の理念に基づき高利貸しに対置する貸付事業を通して生活の向上を図るため、未組織労働者や中小商店の勤労者のための組織として設立された。
 このような生協は、関東大震災のあとに賀川豊彦などの尽力で設立された江東消費組合の姉妹組合だった中之郷質庫信用組合の例があり、この生協は戦後も生き残っていたが詳細は不明。宮崎や鳥取にも信用生協が設立されたというが、この種生協の活動報告が全国の場で行われるのは初めてだった。
 岩手信用生協はサラ金によって夜逃げか自己破産を迫られる勤労者家族に組合員出資金と市町村からの預託金をもとに金融機関から借り入れ、債務整理と生活資金を貸し付けをし、自治体やNPOと提携し生活再建支援、自殺防止対策など取り組んでいる。多重債務相談件数は02年には00年の倍になり、04年に5000件、08年5415件となったという(貸金業法などの改正もあり09年から減少へ)。
 この報告で感銘をうけたのは、まず銀行はじめ労組を基盤にする労働金庫とも縁がとおい未組織の労働者や零細企業関係者など「社会的弱者」を対象にこのような生協を設立したこと、行政やNPOと提携し、その困難な事業を継続し多重債務者が多発した時期に大きな役割を果たしたことである。中之郷質庫生協のことを知ったときは「賀川さんが居たし、産業組合法では組合員からの預金も預かれたからやれた」と考えたがーー。
 この報告に対し、会場から「サラ金は遊興などの借金が多い、多重債務者に組合員の出資金を使うのは問題でないか」といった質問が出た。最近は「生活費補てん」目的の借金が最も多いと説明されたが、貸付は本人にするのでなく「家族」にするという方式に感心した。多重債務者の多くは生真面目で返すためにまた借りる、家族には内緒だ、すぐれた相談員は法律に詳しい人ではなく生協の配達経験者だ、といったことも印象的だった。上田専務は「社会的弱者の金融的排除の解消のために貢献するソーシャルファイナンスを生協で実現したい」「頼母子講や無尽の現代版として、暮らしの相談と一体で」この事業を推進したいと決意を述べた。
 現在、生協に結集している組合員には失業中の若者など困難な状況にある社会的弱者は多くはない。しかし、生協は助け合い・協同の組織として社会的弱者に役立つものでありたい。信用生協のような活動と事業を既存の生協が始めようとする場合、「助け合い」理念よりも「自己責任」論の影響を受けている組合員の賛同をうるのは簡単ではないのではないか。いくつかの生協は組合員と論議をふかめ、この活動と事業に取り組み始めていると報告されたが、日本の社会で希薄になった「助け合い・協同」の精神をどう広めるか、生協においてもそのことが最大の課題ではないかと考えさせられた。
研究会の開会挨拶で生源寺真一理事長は生協の理念として正直、誠実、他への思いやりの大切さを強調した。「他への配慮、思いやり」は助け合い・協同の前提だと思うが、そのような理念がないと社会的弱者のための活動はできない。そのような理念をめぐる学習や論議を各生協で改めて進められることが期待される。「賀川献身100年」の取り組みでは彼が取り組んだような社会的弱者のための取り組み、その思想などが実践的に論議されたとはいえないように思われる。
間もなく「国際協同組合年」を迎える。そのためにも上田専務のいう頼母子講のころからの日本社会の「助け合い」の伝統や「協同」の理念をひろめるため組合員への教育宣伝、学習活動に取り組み、リーダーのところでは理念が事業や活動に結び付く実践的な論議(今回の集会のテーマ)が進むことを期待したい。

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