コラボ・コープOB

生協のOB同士で、交流と意見交換を進める場とします。  自分のこと、お互いのこと、生協のこと、世の中のこと、―-協同・平和をめざして。

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店舗の労働は、「単純労働」でしょうか?

[大友弘巳]

朝日新聞の「論壇時評」を読んで

 総合雑誌の論文を読むことなど滅多にしかなくなっている私にとって、朝日新聞の毎月の「論壇時評」(評者=社会経済学者の松原隆一郎東大教授)は、 社会や経済について、学者や評論家が今、どんな意見を述べているのか、そしてそのポイントは何か、などを学ぶ大変ありがたい機会となっています。
 しかしながら、2月22日の朝刊に掲載された今月の時評には、いささか気にかかる点がありました。
 評者はまず、今年の大学生の就職内定率が73.1%と1996年以降最低となったことに着目し、「こうした厳しい情勢は、若者たちの『生き方』を変えつつある。『就活』の早期化のみならず、自動車のような高額商品の購入に拒否反応を示す『嫌消費』、結婚に向け活動する『婚活』までが観察されている」と紹介した上で、現代社会の中での人々の生き方ついて問題提起している3人の学者の論を取り上げ、それぞれを論評しています。
 大事な問題提起であり、それぞれなるほどとうなずく点も勿論あったのですが、気にかかったのは以下の点です。

 山田昌弘氏が中央公論3月号に寄せた「生きづらい時代の幸福はどこにあるのか」と題する論文を取り上げている中での引用で、「オートメーション化・IT化が進むと(ポスト・フォーディズム体制)、コンビニやファストフード、スーパーを典型とするような、マニュアルに沿って機械の手足となる単純労働が急増するからだ」という行です。
 山田氏の論文そのものを読んでもいずに述べるのはいささか申し訳ないのですが、この表現は松原氏自身も特に問題とすることなく取り上げておられると思いますので、学者の方々の認識は今もそういうものなのか、と感じた次第です。
 店舗の労働が、(本部から言われた通りに)「マニュアルに沿って機械の手足となる単純労働」とみなされていることに、「少々異議あり」と申し上げたいのです。

高度成長時代の、初期のチェーンストアの話

 1960年代から80年代頃まで、スーパーマーケットやファストフード、コンビ二などの業態のチェーンストアが生成し、急速に発展し始めた頃は、世の中も高度成長の時代で、事業拡大のスピード(多店舗出店による)を急ぐためには、訓練もロクにせず、マニュアル通りに仕事をこなしてくれる労働力で間に合わさざるを得なかったということはあったと思います。
 その当時は、アメリカにも日本にも、本部が細かいことまで決め、店舗の売り場で働くワーカーは本部から言われた通りに、マニュアルで示されたことを忠実に実行するだけでよいとしていたチェーンストアがあったことは確かです。
かつて、長い間アメリカのディスカウントストアのナンバーワンだったKマートは、ワンパターンの売り場作りと徹底した店舗作業の標準化を進め、マニュアル運営、ローコスト運営の模範とされていました。
 また、スーパーマーケット業界では、アルバートソンズがもっとも標準的な店作りと標準作業に徹し、安い人件費率で高収益を上げ、成長率の高さで注目されていました。
 しかし、Kマートは随分以前に倒産してしまっていますし、アルバートソンズも業績が悪化して、今では他のスーパーマーケットチェーンに買収されてしまっています。
 その原因は、顧客からの支持が弱く、結局は競争力が弱かったことにあると思われます。競争が激しくなったときには、強みが弱みに変わってしまった、競合に負けないように頑張れるマンパワーが乏しかった、ということだったのではないかと考えられます。

「パブリックス」の事例

 他方、アメリカのスーパーマーケット業界には、「パブリックス」のような例もあります。
 2006年に日本で刊行された「パブリックスの『奇跡』(太田美和子著 PHP研究所刊」によると、2005年度売上206億ドル、店舗数876店を擁する巨大企業へと発展しています。店舗を出店しているのはフロリダ州を中心とする近隣のいくつかの州だけのリージョナルチェーンですので、日本ではあまり知られていないのですが、そのリージョンの中では食料品の売上高はナンバーワンであり、アメリカの小売業第1位のウォルマートや第2位のターゲットのスーパーセンターと激しく競合しながらも、成長発展を持続しています。
 その要因は、「アメリカで一番愛されているスーパーマーケット(当時、12年間連続顧客満足度NO1)」であり、すべては「買い物が楽しい場所」のために「当たり前」のことをやり続けることをモットーとして努力し続けていることによる、とされています。
 その努力を、店舗で働く社員がやり続けることができているのは、本部は店が運営せねばならない範囲やガイドラインを示すだけで、そのガイドラインに沿って自分で考え、問題を乗り越える従業員、特に管理者を多数育成することができていることにあるとされています。一口にチェーンストアと言っても、いろいろ違いがあることを感じます。
 そのような人財(材ではなく財としている)を生み育てる二つの方針は、①底辺の作業から(教育・訓練を)始める、②社内で登用する、とシンプルであり、実践重視の生きた教育が徹底されています。優れた管理者は、優れたワーカーとしての経験を蓄積していくことによってこそ育つもの、と考えられているものと受け止められます。
 「パブリックス」では、山田氏や松原氏が想定しているスーパーの労働者像とはまったく違う労働者が、いきいきと働いているということではないでしょうか。
 そして今、日本のローカルスーパーの事業連帯組織(コーペラティブ・チェーン)であるCGCジャパングループが幾多の人材を送り込んで研修を受けている先が「パブリックス」ですので、その成果に基づく変化が、日本の多くのスーパーマーケットの店舗の中でも着々と進んでいるものと推測されます。

王将フードサービスの若き店長の事例

 もう一つ、つい先日(2月15日)の朝日新聞の夕刊の、「凄腕つとめにん」欄に大きく紹介されていた「王将フードサービス」チェーン362店中のNO1店舗(空港線豊中店)の若き(29歳)店長池田勇気さんのことは、多くの皆さんがご覧になり、印象に残っていることと思います。
 学生時代ずっと「餃子の王将」でアルバイトとして働き、そこでめぐり合った店長に傾倒して「こんな店長になりたいと」と就職先に王将を選んだ。入社2年目に早くも店長となり、失敗の中から学んで、社員から信頼される店長になろうと努力。不振店の経営再建、辞めたがっていた社員も(彼と)一緒に仕事をすると元気になるなど、店や社員をよみがえらせる手腕と情は、上司から「再生工場」と呼ばれるほどとなり、NO1店の店長に抜擢された。行列ができる日曜日には、看板商品のギョーザが全国平均の3倍を超す3万個も売れる。ただ、全国一の売上にも「数字を追ったことはない。一人ひとりが力を出せば、結果はついてきます」と言い切る。「店長になりたい」という声が従業員から届き始めたことで、いっそうの情熱をかきたてられている。と、紹介されています。
 店舗の労働者といっても店長は別だ、ということではなく、その部下も元気に自らを磨き店長になることを目指す関係が出てきているわけで、「パブリックス」と共通するものを感じます。
 そこには山田氏や松原氏が見ているとは違う現実があるということではないでしょうか。
 若者たちの新しい「生き方」の一つとして、このような例もあることにも着目してほしいところと思います。
 勿論今はまだ、こうした変化が大多数の店舗で起きているとまでは言えませんが、今後ますます競争が激化していく中で、生き残っていくのはこのような変化を遂げていくチェーンであろうと思われるのです。

生協の店舗への懸念

 高名な学者のお二方に異議を申し立てていながら、自分の足元の生協の店舗の現状がいささかならず心配な状況にあることは誠に残念なことですが、身近な生協の店舗の最近の様子を見たり聞いたりしていて何よりも心配なのは、数年前までに比べて明らかに、職場に元気がなくなっているように感じられることです。
 ギョーザ事件の影響や、不況の下での組合員の消費の切り詰め、デフレによる単価の落ち込み、競合の激化などが重なって、供給高が大きく落ち込み、その挽回があまりにも困難なため、無力感に陥りがちなのかと思われますし、コープネットグループとしてここ数年のうちにオープンした10店舗近い新店の中で、計画通りの供給高を達成している店舗が極僅かしかないことも、気持が暗くなる原因になっているものと思われます。
 それだけではなく、ここ数年、コープネットへの機能統合が大きく進められたなかで、本部が肥大化してしまい、その結果として、競合が激しくなかった過去の成功体験に基づく、細かいことまで本部主導で、店舗現場が受身になるようなチェーン運営に陥っていることが、元気が出ない原因になっているのではないかと感じています。
 この厳しい時代を乗り越えていくためには、パートタイマーを含めて一人ひとりの職員が自分で考え、仲間と協力し合い、元気に力を発揮すること、一つひとつの店舗が組合員との結びつき信頼関係を築きながら、チームとして「パブリックス」や「王将」のようなパワーを発揮する組織を作り出すことが欠かせない要件と思います。
 店舗に元気がなくなっていることについて根本的に見直すことなく、現状の運営方針と体制のままで、店舗独自の供給促進などを少し認めるなど程度の小手先での対応では、店舗現場に元気が出てくるとは到底思えません。
 事業連帯のあり方を見直すというなら、先ずこうした店舗の現状を根本的に見直し、事業の抜本的立て直しを進めることをテーマとして、真剣に検討すべきと考えるものです。

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