コラボ・コープOB

生協のOB同士で、交流と意見交換を進める場とします。  自分のこと、お互いのこと、生協のこと、世の中のこと、―-協同・平和をめざして。

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 「個」を培う時代

[大友弘巳]

  2月7日の朝日新聞の「語る人」欄に、作家の加賀乙彦さんが登場し、「本当の幸福はどこに」とのタイトルで語られた記事を読んで、いろいろ考えさせられました。
 リードに、「戦争も内戦もない。世界を見渡せば私たちは決して不幸せではないのだろう。なのになぜ、これほど幸せを実感できないのだろう。 日本人の「幸福度」は178国中90位との調査もある(2006年、英レスター大)。いったい、私たちの考える幸福とは?」
とあり、その上で、加賀さんからの話の内容に進んでいます。
 なぜ幸福と感じられないのか、どうすればよいか、と進み、「勝ち組」「負け組」など人間をランク分けする価値観をそれとはなしに受け入れ、「KY」という言葉が流行している社会の風潮を批判すると共に、一人ひとりの心の持ちよう、「他人がどう思おうと自分は自分だ」と思える本当の「個」を育てておく必要を説いています。
 私は、心の持ちようの問題だけではなく、急速に貧富の格差が広がっている現状や、失業するとセーフティネットが不十分なため忽ち貧困に落ち込む現実、地球温暖化に歯止めがかからず、高齢化と少子化が進む中での閉塞状況など、社会の仕組みや制度の問題が、幸福感を持てない原因になっていることを見詰めるべきと考えていますが、そうした問題に向き合い、社会をよりよい方向に変えていくためにも、本当の意味での「個」を育てていくことの必要性という点では同感しています。そして、このような「個」は、自分の頭で考え抜き、他人と意見をぶつけ合いながら、人間関係を培っていくなかでしか、育ち得ない、という見解にはまったく同感です。

  加賀さんは、「徳川幕府の治世以来、日本人の多くは『お上のいうことだから』『どうせ変らないから』との理由で、社会のあり方や国の未来像を考えることなく、ただ流されてきた気がします。」とも述べています。
 国民の多くが太平洋戦争に駆り立てられていったことも、そうした傾向の結果だったと考えられます。
 戦争のあまりにも大きな犠牲の上で、新憲法が制定され、「基本的人権の尊重・国民主権・平和主義」の三つが国是となり、第13条の中で「すべて国民は、個人として尊重される」、14条では「法の下に平等」、19条では「思想及び良心の自由」、21条では「いっさいの表現の自由」、25条では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」などと定められ、憲法上では「個」の尊重は確固として定められました。
 しかし、これを内実化するための国民の不断の努力がなければ、形骸化することはいうまでもなく、日本の現状は、残念なことになっていると言わざるを得ません。
 昨年秋の総選挙は、初めて本格的に政権を争う選挙となり、劇的な政権交代が実現したことは、「もうあきらめてはいられない」と、変化を願う国民の切実な意思が噴出したものとして、歴史的な意義を持っていたと感じています。
 遺憾ながら、新政権の中枢の人物たちが政治資金問題で旧政権と変らぬ体質を持っていることが明らかとなって、急速に支持を失っていますが、公約やマニュフェストまで支持を失っているわけではなく、世論調査の結果でも、国民の期待に応える政治が求められています。(公約やマニュフェストの内容を全面的に支持しているわけではありませんが)
 現実はなかなか願う通りには進まないものと予想されますが、今大事なことは、失望してあきらめてしまうことに陥ってはならない、ということであり、政治をよりよい方向に変えていく力は、一人ひとりの国民が、自分の頭で考え抜き、他人と意見をぶつけ合いながら、人間関係を培い、自ら「個」を育てる努力をすることにある、つまり民主主義を内実化させることにあるのではないかと思われます。
 加えて、「個」の確立の上に、人々の「協同」を多様に築いていくためにお互い様努力することこそが、未来に希望を作り出す力になるのではないか、と考えるものです。
 その点で、地域の中で、人々が自発的に協同しあっている日本で最大の組織として、生協の役割が大きくなっていると感じています。

 しかるに、誠に残念ながら、日本の生協は、2000年代に相次いだ商品事故で信頼を失い、1930年以来といわれる世界的な大不況が訪れたことも重なって、今年度はついに供給事業高で前年を下回り、損益も圧倒的多数の生協が、赤字、もしくは経常剰余率1%未満という状況に陥り、まさに、1980年のICA大会で、レイドロウ博士が提起した「三つの危機」が日本の生協にも訪れたと受け止めなければならない事態となっています。
 三つの危機とは、「信頼の危機」「経営の危機」「思想(理念)上の危機」ですが、二つまでは自明のこととして、思想(理念)上の危機については、現状をどう見るか、これまでの歩みをどう振り返るかによって、捉え方に違いがあると思われます。
 それは、今後どう進むかということにも意見の違いが生れる問題であり、深い総括の議論を広く行うことによって一致点を見出していくことが大事になっていると思います。
 この危機を乗り越えることは容易ならざることであり、すべての関係者(ステークホルダー)が、この危機に向き合い、何が問題か、どうするか、自分の頭で一人ひとりが真剣に考え、議論に参加し、生協が進むべき方向に確信を深め合うこと、そして、それぞれの取り組みや協力が繋がって、大きな力が発揮されることによってこそ、危機を乗り越えていくことができるのではないでしょうか。
 
 先日のさいたまコープ役職員OBの会(にじの会)では、佐藤理事長が参加して現状を報告すると共に、「組織統合も選択肢の一つとする事業連帯のあり方の検討に参加する」ことを率直に明らかにし、OBからの意見も受け止めて検討していく姿勢を表明しました。 
 これを受けて、私は、ここまでさいたまコープが発展するのを担ってきたOBたちとして、また、地域の中で多くの組合員と共に生協を利用し、何らか関わっている者として、一人ひとりが自分の問題として関心を持ち、真剣に考えたり、話し合ったりしていきましょうと呼びかけました。
 OBが無関心であったり、口をつぐんでいるようでは、ステークホルダーとしての関わりを自ら放棄するものであり、組合員からは無責任とみられてもやむを得ませんし、結論がどうなるにせよ、さまざまな意見を交わし、議論や検討を尽くすことこそが、連帯の見直し強化に役立ち、再生のエネルギーとなるはずと考えています。
 そんな折だったからかもしれませんが、加賀さんのお話が心にかかった次第です。 
 「個」を培うことが大事な時代となっていることを、あらためて強く感じています。

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